「核」で欧州を脅すロシア

「核」を振りかざすロシアの強硬姿勢に対し、欧州は警戒を強めました。

 欧州各国と米国、カナダ、トルコで構成するNATOは2022年、ロシアを最大の脅威とみなす「戦略概念」を策定。米国が欧州のNATO軍基地に展開する核兵器を含め、核抑止力こそが同盟国の安全保障を担保する最大の要素と位置付けたのです。

 米国は欧州に核弾頭を配備しており、英国とフランス以外の非核保有国であっても有事の際には米国の核を利用できる態勢を整えています。いわゆる「核共有」の制度です。現在、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコの5カ国の基地に米国の核弾頭が約100発あると言われています。

 ところが、2025年1月に米国のトランプ大統領が就任し、第2次トランプ政権がスタートすると、米欧の関係は大きく変わり始めました。トランプ氏はロシア寄りの姿勢を示し、ウクライナ戦争の停戦を仲介するなど、ウクライナ側に立つ欧州各国とは異なる動きを見せたのです。

 さらにトランプ氏は、欧州のNATO加盟国に対し、軍事費をGDP比5%まで引き上げるよう要求。欧州に対し、応分の負担を求める姿勢を鮮明にしたのです。

「アメリカは欧州の同盟国を守ってくれるのか」――。米国の「核の傘」に対する疑念が欧州で広がったのは無理もありません。欧州の安全保障は自分たちで確保しなければならないという動きは、そこから次第に強まってきました。ミュンヘン安全保障会議でのメルツ独首相の発言もこうした流れに沿ったものでした。