筆者のスマホにも繰り返し現れる高市総裁の広告
伝統的な選挙のやり方、すなわち街頭演説、電話かけ、チラシの新聞折り込み、選挙公報といった「紙・電話」を中心とした媒体は、現在、ほぼ高齢者の媒体となっている。固定電話は8割が留守、通じれば高齢者であり、足腰が悪かったり車の免許を返上したりで外出も一苦労という方々の姿が浮かぶ。
選挙チラシは街宣での配布に加えて新聞折り込みが認められているが、新聞購読しているのも圧倒的に高齢層といえる。もとより、高齢層の投票率は高く、このような伝統的な選挙活動が重要性を失ったわけではない。
しかし、郊外や中山間の選挙区では人口密度が薄く、ターミナル駅や繁華街もないため、このような活動では現役世代にはアクセスできない。街宣車を走らせても人影が薄く、とりわけ若年層には接触できない。現役世代や若年世代にアプローチするには、スマホの画面を通してしか行えないのである。
立憲民主党と公明党が結成した、新党「中道改革連合」のポスター=2026年1月23日、東京・有楽町(写真:共同通信社)
そこにあって、LINE、ショート動画、X (Twitter)、Instagramおよび有料広告などのネット媒体は、若年世代や現役世代を含めて全世代的にバランスよくアプローチしている。私も徒然にスマホ画面を繰るなかで、何度か高市総裁や自民党候補のバナーを目にすることがあった。
現在の日本の有権者が選挙の際の投票先を決めるにあたって、単純接触効果からいっても、これらネット上の材料は極めて大きな影響力を持っている。
いささか単純化すれば、現在、日本の有権者は「チラシ・固定電話・新聞」に依拠する高齢層と、主にネットに情報源を持つ現役世代以下という「二つの国民」に分岐しているのであり、そのそれぞれに独自の政治的認知空間、いわば「二つの世界」があるといっても過言ではない。
そして自民党は、今回、その「二つの世界」の双方に訴求した。高齢層の支援者に向けた従来のどぶ板活動の手を緩めず、同時に、ネット上での有料マーケティングを行って現役世代へのアクセスにも力を入れた。高市自民党は、縮小しながらもなお塊として影響力を持つ高齢層と、勃興しながらも掴みどころのない現役世代との、その双方を効果的に押さえたといえる。