自民党総裁選の所見発表演説会に臨む立候補者。(前列左から)小林元経済安保相、茂木前幹事長、(1人おいて)林官房長官、高市前経済安保相、小泉農相=22日、東京・永田町の党本部(写真:共同通信社)
目次

 自民党総裁選が22日、告示された。「自民離れ」が顕著な中で、次の総裁は政権与党の存続という大きな責務を負うことになる。自民に限らず、夏の参院選では民主党政権の主要メンバーがそろう立憲や、公明、共産といった“老舗”政党が凋落した。一方で、国民民主や参政といった新興勢力の台頭が顕著に表れた。こうした政党勢力図の変化の背景にあるのが、有権者の世代交代だ。ボリュームゾーンが「団塊世代」から「現役世代」へとシフトしていく中で、日本政治は新たな転換点を迎えている。

(大井 赤亥:広島工業大学非常勤講師)

有権者の世代交代が招いた「多党化」

 2025年7月の参院選は、日本社会の有権者の世代交代に伴い、政党政治の一層の多党化を促すことになった。

 2010年代を通じて自民党と公明党は圧倒的な与党地盤を構築してきたが、2025年参院選では自公は19議席を失う敗北、立憲民主党も比例票を大幅に減らし、二大政党化は遥かに遠のいた。

 伝統的な組織政党の凋落の反面、参院選で躍進したのは参政党や国民民主党であり、その背後には若年世代や就職氷河期世代の支持があった。たとえば「日本人ファースト」を掲げた参政党は若年・中年層から票を獲得し、国民民主は「現役世代」の社会保険料の負担軽減を訴えて支持を集めた。

 2025年参院選は、日本の有権者のボリュームゾーンが「団塊の世代」から「現役世代」へと入れ替わる端境期にあたり、世代間格差という争点を浮き彫りにさせながら、政党政治の流動化をもたらすことになったといえる。

 9月22日に告示された自民党総裁選の裏テーマは、そもそも政治家や政党を忌み嫌う「現役世代」が、それでもなお政党政治の主人公になっていく時代にあって、かつての「国民政党」がどのような自己改革を示せるかにあるといってもよい。