記者会見する立憲民主党の野田代表(写真:共同通信社)
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(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)

参院選を経た新しい「令和の政治」

 参議院選が終わった。結果は既知のとおり、自公過半数割れ。ねじれ国会どころか、衆参両院で与党少数という極めて不安定な政治情勢になった。

 だが、結果として、新しい「令和の政治」が本格始動する好機と捉えることもできるはずだ。

 少し長い目で見れば、自公連立を基軸とする四半世紀にわたる政治の大前提が崩れたからだ。

 自公連立は1999年の公明党との連立合意以来、25年にわたって日本政治の基盤となってきた。この間、2009年から2012年の民主党政権を除けば、自民党は一貫して政権政党の座にあり、公明党との連立は安定した政権運営の象徴であった。しかし、今回の選挙結果により、この長期にわたる政治的安定の構図が根本から揺らいでいる。

 実質的解散の懸念を抱えていた自民党の派閥も麻生派を残して解散した。先日も旧安倍派が解散し、財産を党に寄付したことが報じられた。

 この動きは単なる組織改編にとどまらない。自民党の派閥は戦後政治において、政策形成、人事、資金調達の中核的な機能を担ってきたが、従来型派閥はとうとう過去の活動自粛や名称変更とは異なるレベルで、文字通りに「解散」した。派閥がいずれ復活するにしても、自民党の意思決定は大きく変わらざるをえないだろう。

 この変化の背景には、政治とカネに対する厳しい社会からの視線がある。政治資金パーティーを通じた資金調達は、1990年代の政治改革以降も温存されたものの、透明性の欠如と利益誘導の温床として批判を受け続けてきた。

 2022年に発覚した自民党の政治資金不記載問題は、こうした構造的問題を改めて浮き彫りにした。旧安倍派を筆頭に主要派閥が軒並み問題を抱え、検察捜査の対象となったことは、派閥システムのみならず自民党そのものの正統性を根底から揺るがせた。

 安倍政権下で続いた自公で300を超える議席を確保し、数の論理で押し切る政治も少なくとも当面は成立しなくなったといえよう。

 第二次安倍政権発足以降の「一強政治」は、衆議院で絶対安定多数を確保することで、野党の抵抗を事実上無力化してきた。この圧倒的な議席数を背景に、特定秘密保護法、平和安全法制など、野党が強く反対する法案をも次々と成立させてきた経緯がある。

 しかし、こうした「数の論理」による政治運営は困難になった。衆参両院での少数与党という状況は、法案審議における野党との協議が必須となり、従来のような強行採決による法案成立は事実上不可能となった。