国民民主党の玉木雄一郎代表(写真:共同通信社)
(大井 赤亥:広島工業大学非常勤講師)
混沌とする首班指名、3つのシナリオ
2024年衆院選から2025年参院選にかけての政治変動は、日本社会の有権者の世代交代に伴い、政党政治の一層の流動化を促したものであった。
それは、2025年10月、自民総裁選での高市早苗氏の選出と公明党の連立離脱をもたらした。野党側も立憲が多数派形成にむけて動きだし、国民民主の玉木雄一郎代表を中心とした首班構想を示しつつ、維新を含めた3党協力を模索しており、永田町は一気に権力の流動期を迎えている。10月21日とされる首班指名選挙は、日本政治の転換点ともなりかねない。
首班指名選挙は、1回目の投票で過半数を得る候補がいなかった場合、相対的多数をもって総理大臣とする決選投票となる。
衆議院での多数派形成には3つのシナリオがいわれている。第一に、自民が単独196議席で高市総裁を首相に選出し、自民の少数与党政権が発足する場合である。現時点ではこの可能性が高いと思われるが、自民単独政権となれば、法案や予算案の可決に必要な国会の過半数に届かず、政治停滞を打破するための衆院解散の時期が焦点となる。
第二に、自民と野党の一部が高市首相を選出し、「自民+α」の政権が発足する場合である。しかし、公明の連立離脱が生じた以上、国民や維新にとって少数与党に加わるメリットは少ない。自民・国民の両幹事長が14日、国会で会談したが、この可能性は日に日に薄まっている。
会談に臨む自民党の鈴木幹事長(右)と国民民主党の榛葉幹事長=14日午後、国会(写真:共同通信社)
第三に、立憲・維新・国民が玉木首班に投票するケースで、この場合、3党合計210議席が自民の196を上回る。もっとも、安全保障や原発などの課題で野党間の一致が得られるか、立憲内の左派も含めて玉木首班に乗れるかといった課題があり、実現はなお流動的といえる。
しかし、首班指名まであと一週間の時間があり、政治は可能性のアートである。この間の政局を振り返り、野党結集政権の実現にむけた問題提起をしてみたい。
