記者団の取材に応じる公明党の斉藤代表=12日午前、東京都千代田区(写真:共同通信社)
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(市ノ瀬 雅人:政治ジャーナリスト)

連立解消どころか「野党との協力」も

 公明党は10月10日、民主党政権の一時期を除いて26年間続いた自民、公明両党による連立政権からの離脱を表明した。また、11日以降、野党同士で行う国会運営や政策に関する協議にも参加する方針などが、矢継ぎ早に明らかとなった。

 それどころか、公明党は野党との選挙協力もあり得るとした。連立解消後は自民党政権に対して閣外協力に転じるという当初の甘い観測は完全に外れ、野党色を鮮明にした形となった。想像をはるかに上回る推移と言える。

 公明党の斉藤鉄夫代表は10月12日のテレビ番組で、「政治資金収支報告書への不記載問題への基本姿勢、企業・団体献金に関する条件を自民党がまるまるのむなら、連立協議を拒否するものではない」と話した一方で、「しかし、一任をもらって決断した重みはある。軽々に元に戻りますとは言えない」と強調した。

 自公連立は近年の日本政治における「前提」と言えるほど自明なものになっていた。どこまでもついてゆく「下駄の雪」という公明党への揶揄がそれを象徴する。

 だが今回、その比喩は当事者である公明党、支持団体の創価学会の意識とは大きく違っていたということを世の中に見せつけた。自公党首会談決裂という電撃的幕切れが、また一段と衝撃を強めた。

 しかし、老舗政党としての冷徹な理論や政策、譲れない一線が粛然と存在していたという事実に目を向ければ、公明党が政策、理念の異なる政党に見切りを付けるのは当然であるとも言える。

 党員が所望する法律や政策の実現を優先しようとするのは、むしろ自然の成り行きだ。公明の名のルーツは、「公(おおやけ)」と「明るい」で清く公正との意味だという。

 連立離脱は、自民党の足かせで主張しにくかった公明党独自の政策を、共通する野党との協力で成就する好機となる。野党側も、国会における与野党勢力構図の激変をうまく利用すれば、公明党を引っ張り込んで政策実現のテコにできる。これは有権者への真摯な態度にもなる。

 公明党はさっそく、野党と組んで政治資金制度改革法案を提出し、成立させたいとしている。近く召集される臨時国会か、年明けに開かれる通常国会を目標としており、まさに電光石火のごとくである。

 このほかにも、例えば、懸案の物価高対策として多くの政治家が訴えてきた消費税減税がある。公明党を含む野党間で協力すれば、国会における数の上では成立させることは不可能ではないだろう。