高市早苗首相(写真:REX/アフロ)
波乱の船出を乗り切り、高市政権が2025年を終えようとしている。期待先行とも評される高支持率だが、2026年はその真価が本格的に問われる年になりそうだ。高市首相にとって、衆院解散のベストタイミングは? 温度差が明らかな自維連立の行方は? 高市カラーの発露、そして対中外交の成否は? 国政に広範な人脈と豊富な政治取材経験を持つジャーナリスト・市ノ瀬雅人氏が、2026年の政治情勢を前後編にわたって解説する。
(市ノ瀬 雅人:政治ジャーナリスト)
高支持率のまま年を越す高市政権
戦後日本政治において、自民党の旧木曜クラブ、旧宏池会といった保守本流路線を汲んだ石破茂政権は、2025年夏の参院選で敗北した。1940年の帝国議会における斎藤隆夫の反軍演説、日米開戦を巡る歴史検証にこだわりを見せた文人宰相は、最後は異例となる世論の続投要請を受けつつも、責任を取る形で25年10月に退陣した。
代わって首相の座を射止めたのが、憲政史上初の女性宰相となった高市早苗氏である。スパイ防止法や情報機関の創設を前面に出し、責任ある積極財政と経済成長戦略を旗印とする。
同時に、民主党政権時を除いて四半世紀続いた、自民、公明両党が参画する連立政権が終焉を迎えた。そして、公明と交代する形で、日本維新の会が初めて政権に加わることとなった。
2025年のこうした激動を経て、与党は現在、衆院で過半数(233)ギリギリ、参院では過半数を割り込む。政権運営は極めて不安定な状況にある。
さらに、連立と言っても維新は閣外協力である。そのうえで、衆院議員定数の45削減という、達成が容易ではない条件を課した。高市政権の発足当初、短命に終わりかねないという懸念がささやかれたのは、いわば自然なことであった。
こうした観測を覆した大きな原動力は、25年10月の発足時以来、60%を超す高水準の内閣支持率をキープしていることだ。12月20~21日の共同通信の世論調査でも64%を付けた。ほぼ同じ時期の読売、日経、産経各紙などの調査では、いずれも70%を超えた。
総裁就任時の党執行部人事では、総裁選で支援を受けたキングメーカーである麻生太郎副総裁の影響が強いと報じられた。すると、その後の組閣では、麻生派色を極力抑える布陣とし、機敏に世論の動向を受け止めた。
2025年度補正予算案が衆院を通過し、自民党にあいさつに訪れた高市早苗首相。右は麻生太郎副総裁=2025年12月11日、国会(写真:共同通信社)
首相として初めての国会論戦に挑んだ先の臨時国会では、台湾有事と集団的自衛権を巡る予算委員会での答弁が物議を醸した。しかし、日中の緊張感が高まってくると、国会答弁では誤解を招きかねなかったと「反省」の意を表した。
孤独な環境で熟考して判断を下すと言われる高市首相のスタイルだが、こうした一定の柔軟さも併せ持ち、それが奏功しているように映る。そして、次々と降りかかった難題について、高支持率が防火シートのように政権を護り、炎上を最小限にとどめてきた。これが、この2カ月間であった。
近年では異例となる高支持率を下支えするのは、高市氏の歯切れ良い物言いと、親しみを感じさせやすいキャラクターが味方しているのは間違いない。しかし同時に、世論を踏まえた微妙なかじ取り、ひたすらに政策に取り組む姿勢をアピールするという戦略性が、予想を上回る安定性に寄与している。