会談後、記者会見で握手する高市早苗首相(左)と日本維新の会の吉村洋文代表=2025年12月16日、国会(写真:共同通信社)
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 波乱の船出を乗り切り、高市政権が2025年を終えようとしている。期待先行とも評される高支持率だが、2026年はその真価が本格的に問われる年になりそうだ。高市首相にとって、衆院解散のベストタイミングは? 温度差が明らかな自維連立の行方は? 高市カラーの発露、そして対中外交の成否は? 国政に広範な人脈と豊富な政治取材経験を持つジャーナリスト・市ノ瀬雅人氏が、2026年の政治情勢を前後編にわたって解説する。

【前編はこちら】衆院解散うかがう2026年、高市首相の勝負は秋か?2027年に持ち越せば政権継続に黄信号も、政治日程に見る3シナリオ

(市ノ瀬 雅人:政治ジャーナリスト)

温度差のある自民・維新だが…

 滑り出しをクリアした高市早苗政権は、2026年どうなるか。まずは、大政局の末に誕生した自維連立について、“アキレス腱”となり得る重要法案を通して展望したい。

 年明けの通常国会では2026年度予算案審議と並行する形で、企業・団体献金を見直す政治資金規正法改正案が審議される見通しだ。与野党から複数案が出ているが、献金の受け皿となる組織の範囲などを巡り、意見の隔たりは大きい。

 企業献金というテーマの性格から、自民党内は慎重論一色と思われがちだが、一概にそうとは言えない。党派閥による政治資金収支報告書への不記載問題(いわゆる裏金)という頸木(くびき)を抱える自民党にとって、思い切った改革を行わないと、この問題は終わらないためだ。いつまでも引きずっていられないのである。

 金権事案への決別を有権者に明らかにすることは、衆院選で信を問うための環境整備でもある。このため、政治資金規正法改正は、思ったより早期に進捗を見せる可能性がある。ただ、与野党で折り合う点を見つけるには、紆余曲折を伴うのは当然であり、ギリギリの交渉が必要となりそうだ。

 これに対し、混沌とするのが、衆院議員定数の1割削減である。これは「身を切る改革」が金看板の日本維新の会が連立政権参加の絶対条件とし、自維両党が先の臨時国会に法案を提出した。しかし、野党の強い反発などで継続審議となった案件である。

 この法案は、場合によっては定数のうち45議席を自動削減する条項などを含む。自民党内からも「国会軽視」といった批判が漏れる。また、仮に衆院を通過しても、参院は与党が過半数を割っており、成立は見通せないのが実情だ。

 ともすれば「声高に叫ぶのは維新だけ」というイメージが先行するきらいもあり、悲観する見方が聞かれる。しかし、政権を少しでも安定的に維持するためには、自民党にとってパートナーである維新に対するリスペクトが不可欠であることは、言を俟たない。

 維新肝いりと言えばもう一つ、副首都構想を実現する法案の提出も予定される。仮に自民が「維新の本命は、定数削減より副首都」などと高をくくり、連立を崩壊させては元も子もなくなる。

 言うまでもなく、「下駄の雪」とまで揶揄された公明が、あれよあれよと連立を離脱したのは、ついこの間のことである。

党首討論で高市首相(左手前)に対峙する公明党・斉藤鉄夫代表(写真:UPI/アフロ)

 こうした自民と維新による反発と修復の繰り返しは、しかし、結果として両党の距離を縮めるベクトルに働くとみる。維新内部では、自民との距離の取り方は決して一枚岩ではないかもしれない。ただ、全体としては「雨降って地固まる」の方向へと流れるのではないか。

 逆に維新にとっても、自民との協調以外の道は今のところ見えにくい。維新という政党は大阪では抜きん出た第一党だが、国政でもよりいっそう存在感を高めるために、与党という立ち位置のメリットは計り知れない。この間、与党であるからこその政策実現力を強く実感しているはずだ。政策立案を巡る霞が関の対応も、与党と野党では大きく異なってくる。