米中接近をキャッチアップできるか
26年を見通す外的環境として、外交は避けて通れない。高市首相は先の臨時国会で、衆院予算委で台湾有事を巡り「存立危機事態になりうる」などと答弁し、中国の激しい反発を招いた。情報戦を含め、日中の緊張関係は継続している。
こうした状況の中、米国政府はトランプ大統領が26年春に訪中すると発表した。米国が中国の習近平国家主席の訪米に向け調整しているとも伝えられている。加えて、定例のAPEC、G20の首脳会合の場で、両氏の会談があるとの観測がある。
つまり、米中が経済面などにおいて融和を模索する動きが取り沙汰されているわけだ。
米中首脳会談で握手を交わす米・トランプ大統領(左)と中国・習近平国家主席(写真:The White House/UPI/アフロ)
25年12月にはついに、中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射が行われる事案が発生した。日本政府は、台湾有事を巡る高市首相の答弁は「撤回できない」との基本方針である。
他方、日本の中国に対する現在の姿勢は、米国が対中国で対立一辺倒にならぬよう互恵的な側面のある立場を取ろうとしていることと、相容れなくなる恐れがある。つまり、中国が米国と適度に融和的に接することは、台湾問題などに関し、日本を孤立させる戦術にもなるのだ。
1971年のニクソン訪中を想起したい。日本政府は米中接近を把握し切れず、針路を見失い、翻弄された。そして現在も、米中の融和的な動きに対するキャッチアップが後手に回り、対中国の舵取りが四苦八苦しつつあるという類似性を見いだせる。
緊張関係にあっても、いざというときのために外交の領域をできるだけ広くキープしておくことは重要な戦略だ。自民党閣僚経験者の一人は、2026年を「日本にとって外交的孤独に耐える歴史的訓練の年になるのではないか」と予言した。
高市首相は12月17日の記者会見の冒頭で「強い経済を構築し、国民の皆様の暮らしや未来への不安を希望に変える」と改めて持論を謳い上げた。ご祝儀相場を脱した先に高市政権を待っているのは、幅広い国民の共感か、それとも失望なのか。それに解を出す高市劇場は、これから本番の幕が開く――。



