安倍政権を範とする体制で臨む高市カラー政策
長期政権を狙うには、政権、与党内の統治体制を固めることは不可欠である。また、高市首相が前面に掲げてきた政策に取り組み、成し遂げることは、政権の存在意義そのものである。次は、それらを占う。
政権のガバナンスを巡っては、長期政権を樹立して「1強体制」と呼ばれた第2次安倍政権の手法を範のように取り入れようとする姿勢が浮かび上がってきた。
首相官邸と党執行部の連結のハブに位置するのが、萩生田光一幹事長代行である。萩生田氏は第2次安倍政権発足直後に総裁特別補佐や筆頭副幹事長、その後は幹事長代行として、当時の安倍首相や官邸と党本部とのパイプ役を果たした。
官邸との対外的な窓口を担う尾崎正直官房副長官とのラインなどで、鈴木俊一幹事長らの意向を踏まえ、調整を行う。
官邸内では、第1、2次安倍政権で秘書官や補佐官として安倍首相を支えた今井尚哉氏が内閣官房参与を務める。また、第2次安倍政権で首相秘書官付、そして首相秘書官を務めた佐伯耕三氏(経済産業省)が、内閣広報官として官邸に復帰する。
「50年に1度の強力な政権」(自民党幹部)という第2次安倍政権の再現を狙おうとする意図が見て取れる。
国会勢力における数の上での脆弱性を補う体制づくりに腐心しつつ、保守色のある治安、国防政策の実現に着々と歩みを進める構えだ。その一つが、国家情報局の設置である。
通常国会で関連法案を提出する予定で、高市カラーを表す目玉政策の第一弾とも言える。リベラル勢力による批判が予想され、国会論戦の行方が焦点になる。
また、防衛費増額を賄う所得税増税の27年1月開始も決まった。こちらも与野党攻防は避けられない。家計に響く内容であり、内閣支持率にも痛打を与え得る。総選挙における争点となる可能性があり、政権サイドは神経をとがらせている。
さらに、旧姓の通称使用の法制化に関する法案の提出が検討される。高市氏が長く取り組んできた政策課題だ。
ただ、これに関しては自民党内でも選択的夫婦別姓の導入を求める意見が依然、存在する。また、社会のあり方や価値観を問うイデオロギー性を帯びるだけに、党内外への波紋が予想以上に広がりかねない側面を持つ。
なお、法案ではないが、日銀は12月、政策金利の誘導目標を0.75%に引き上げた。30年ぶりの金利水準であり、26年も利上げは続くとの観測が聞かれる。家計における住宅ローンの金利負担増につながるため、政権への不満を増幅させる要因になり得る。