「政策で忙しい」は解散戦略の“煙幕”
長期政権を築いた第2次安倍政権を振り返ってみたい。12年末に発足した第2次安倍政権は14年秋に衆院解散を打ち、大勝を収めて長期政権の足掛かりをつかんだ。
この時は、直前まで衆院解散の事前報道がないほど「抜き打ち」に成功した経緯がある。大義名分は消費税増税の先送りだった。
12月17日の高市首相の記者会見などによれば、政策を優先するため衆院解散どころではないという。国家情報局設置や安全保障3文書改定など、26年に予定する政策課題が目白押しなのは確かに事実である。
しかし、長期政権達成の帰趨を握る首相の大権行使の優先度が、二の次、三の次というのはあり得ない。「政策で忙しい」は煙幕であり、煙が濃ければ濃いほど、不意打ちによる勝算は上がるのだ。
実際、自民党は衆院小選挙区の予定候補である支部長の選任を着々と進めている。
第2次安倍政権は2度の衆院解散を行ったが、いずれも秋だった。通常国会での与野党攻防による政権の傷を癒し、夏場を挟んで世の中の政治についての意識がニュートラルになりやすい時期である。
自民党は現在、衆院で190議席台にとどまる。これに20~30上積みできれば十分な勝利との声もある。しかし、27年総裁選での再選をより確実にするのは、自民党単独過半数の確保である。
無論、容易な数字ではない。しかし、権力闘争を制するには、真の狙いを見透かされぬよう意識の奥底まで沈め、一気呵成に攻勢に出る時機をうかがうことは必定である。
もっとも、見逃してはならないのは、自民党の政党支持率は高市内閣発足後、3割程度にとどまる調査結果が多いことだ。これは、近年でも低水準の数字である。
高い内閣支持率の党支持率への反映は、今のところ限定的なものにとどまっている。このことは、のどに刺さった棘のように、衆院選勝利への自信を揺るがせるマイナスデータとなっている。
自民党の単独過半数を可能とするには、党支持率を3割台後半~4割近くまで押し上げたいところではないか。しかも、これまで小選挙区で票を上積みしてくれた公明党は、野党に転じている。その分の票の目減りは覚悟せねばならない。
若年層などで熱量が高い「サナエブーム」の裏側では、容易ではない選挙事情が厳然として横たわっている。
【後編に続く】自民・維新連立政権は「雨降って地固まる」?議員定数削減の難関越えれば結束強固に、国民民主は「閣外協力」路線へ



