公明党の「集票マシン」はなくなり…
自民党は多数の政治家を擁し、政治的立場の振れ幅を広く包摂する寛容さを特色としてきた。しかし、誕生の源流は1955年の自由、民主両党による「保守合同」である。
統合の背景は、左右両社会党統一という左派結集への対抗であった。その意味からも、れっきとした保守政党である。高市カラーの政策に賛否は割れても、俎上に載せることの正統性は揺るがない。
7月の参院選での参政党の躍進が表すように、戦後80年を経て、保守的政策への支持は厚みを増しているように見える。
日本は失われた30年を過ごした結果、物価高騰が事実上、定着してしまった。例えば、生活格差是正策は従来、リベラル派の看板であり、個の権利と尊厳を基盤とした。
しかし人口減少による国力低下など抗えない否定的動態の下、保守派は国や地域といった伝統的共同体が包摂する形での新たなセーフティーネットを提唱し始めている。こうした点への期待も取り込めそうだ。高市氏は介護、福祉への造詣が深いとされる。
高市政権が発足すれば、まずは物価高対策の補正予算成立が待ったなしとなる。野党も協力せざるを得ない。その時点で高市カラーに有権者の高い支持があれば、議席増を狙って衆院解散に打って出ることは可能となる。
もっとも、その場合は従前のように、小選挙区における公明党との党対党の完全な選挙協力は不可能だ。難路であることに変わりはない。自民党重鎮の一人は「公明党を集票マシンとしか考えていないような人がいたとすれば、次の選挙は大変になるかもしれない」と語った。
自公党首会談が決裂し、公明党が連立解消を宣言した10月10日、石破首相が戦後80年の所感を発表した。それは、戦前の日本の政府、軍、議会、メディアなどが本来の役割を果たせず、合理的な結論を導けないまま、戦禍を招いたと指摘した。
現下の日本政治は、政権交代可能な2大政党制を目指した小選挙区制の理想とは裏腹に、多党化を加速するような動きが続く。奇しくも80年所感は、漂流する政党政治の現状とオーバーラップする部分があるかのように響いた。