記者会見する自民党の高市早苗新総裁=4日、東京・永田町の党本部(写真:共同通信社)
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(市ノ瀬 雅人:政治ジャーナリスト)

最初の課題は自公連立の継続

 自民党総裁選は10月4日、高市早苗・前経済安全保障担当相が小泉進次郎農相を決選投票で下して勝利した。

自民党総裁選で高市早苗氏に敗れた小泉進次郎氏=4日、東京・永田町の党本部(写真:共同通信社)

 今月中旬にも召集される臨時国会で首相指名選挙が行われる。

 自民、公明両党による連立与党は、衆参両院ともに少数与党に陥っている。しかし、野党が統一して首相候補を立てる気配はなく、高市氏が首相に指名される公算が大きい。日本では憲政史上初めての女性宰相が誕生することになる。

 高市氏は今週前半にも、幹事長ら党四役などの幹部人事を行う。今月半ばに首相指名を受けた後は、速やかに組閣する方針だ。

 これらと並行して大きな課題となるのが、少数与党の解消に向けた連立政権の拡大である。つまり現在の「自公」から、「自公プラスα」にウイングを広げることになる。これまで、日本維新の会は、打診があれば自公との連立協議のテーブルに着く姿勢を鮮明にしていた。

 しかし、高市氏が勝利を決めた直後、公明党の斉藤鉄夫代表は記者団に対し、日本維新の会の重要政策の一つである副首都構想を批判した。公明は昨年衆院選で、かつて常勝関西とまで称された大阪の衆院小選挙区で維新候補に全敗。つまり公明にとって、維新は宿敵に相当するのだ。 

自民党の高市早苗新総裁との会談を終え、取材に応じる公明党の斉藤代表=4日、東京都新宿区(写真:共同通信社)

 一方で、小泉氏に近い自民党の菅義偉副総裁、森山裕幹事長らは維新と属人的な太いパイプを持つ。それをテコとして、維新との3党連立の機運が醸成されていた。

 公明は小泉氏敗退が決まった瞬間、維新との連立ムードを一旦、ニュートラルな状態に戻しにかかったのである。

 公明は、減税路線において国民民主党との親和性を持つ。また、高市氏の基本路線である積極財政政策は、国民民主と重なるものだ。同時に、高市氏勝利の立役者である麻生太郎・党最高顧問は、国民民主やその支持団体の連合幹部と気脈を通じる。

 こうした背景から、連立の「プラスα」の部分について、維新と並んで国民民主が一気に表舞台に躍り出た形となった。国民民主は打診があれば、連立協議には応じる姿勢という。連立政局は、依然として先行きの視界を霧が覆いつつも、新たな局面を迎えている。

 もっとも、国民民主の強力な支持団体である連合は、国民民主と立憲民主党との協力を重視する。自民との連立は支持しないのが原則だ。このため、国民民主の自公連立入りにはハードルがある。

 維新が相手となる場合も含め、自公への閣外協力など幅広い選択肢が検討され得る。

 ただ、保守イメージの濃い高市氏に対し、従来の連立相手である公明は態度を硬化させている。斉藤氏は4日に高市氏と会談し、首相や閣僚による靖国神社参拝、在日外国人政策などを議題にした。明確な牽制である。

 斉藤氏は会談後に連立継続について「今の段階では何とも申し上げることができない」と記者団に述べ、右派的政策に懸念があることを示唆。まずは自公の政策一致のクリアが先となりそうだ。