国民民主党の玉木代表(左)と面会し、握手する自民党の高市総裁=8日午後、国会(写真:共同通信社)
目次

(渡辺 喜美:元金融担当相、元みんなの党代表)

高市自民と公明、ケミストリーが合わないか

 麻生太郎氏が昭和レトロの派閥政治復活でキングメーカーの座を手にしたのも束の間、人気も株価も爆上げの自民党・高市早苗総裁に難題が降りかかった。公明党が連立離脱をチラつかせて異例のクレームをつけてきたのである。自公連立から26年目の離婚の危機だ。

 公明党の斉藤鉄夫代表は「不記載事件の全容解明」と「企業献金の受け皿を限定する規制強化」まで求めた。自公連立は利害と打算の共同体なので最後は折り合いをつけると思っていたが、創価学会幹部や婦人部には強硬論が根強いという。

 萩生田光一氏の幹事長代行への登用、すなわち「傷モノ」議員の復権に象徴される「政治とカネ」問題の軽視というのは、表向きの理由のようにも見える。ホンネは、高市総裁とは思想的ケミストリーが合わないし、新自民執行部は事実上、創価学会や公明党にアンチの立場をとる麻生氏の天下である。

 公明党にとっておもしろいはずがない。信頼関係を伴ったパイプ役がまるでいない。

公明党の中央幹事会で経過報告をする斉藤代表(中央)=9日午前、東京都新宿区(写真:共同通信社)

 おまけに、国民民主党との浮気。党首同士の密会がバレてしまった。

 そんな与党側のドタバタに乗じて、立憲民主党が首班指名に玉木雄一郎・国民民主党代表を担ぐという、唐突で冗談のような提案を持ち出してきた。国民の榛葉賀津也幹事長は「立憲党内もまとまっていないのに、数合わせ優先の話には乗れない」というように、立憲・安住淳幹事長を突っぱねている。

 立憲が本気で政権交代を実現しようとしたら参議院選挙直後から念入りに話し合いを続けてきたはずだが、その形跡はない。高市総裁側が国民民主党を取り込もうと「秘密裏」に話しを進めている最中の「イタズラ」だった。

 また、連合の芳野友子会長が「自民と連立を組んだら組織内議員(電力総連・自動車総連・電機連合・UAゼンセン出身議員)を引き揚げる」という最強の脅しをかけてきた。浮わつく国民に対する立憲・連合の「イタズラ」は足並みがそろい過ぎている。

 国民民主党が連合から独立したら人気は上がると思うが、簡単ではない。連合傘下の国民系労組は、自民党で言えば業界団体の役割に加え、選挙の時には手足となって動く後援会的役割を果たす。原発政策やガソリン暫定税率廃止、基礎控除引き上げなどの政策も、組合の利益と重なるものが多い。

 高市早苗編著『国力研究』(2024年)を読んでも分かるように両者の親和性は高い。だが、国民民主党は高市政権でも連立入りのハードルは高い。あくまでもパーシャル連合で政策実現を図っていくしかない。