退任を決断した石破茂総理(写真:AP/アフロ)
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 石破総理が辞任を表明し、自民党総裁選の火ぶたが切られました。

 誰が出馬するのか、そして誰が勝利するのか、衆参両院で共に与党が過半数を割る中で自民党総裁の首班指名はすんなり確保できるのか、など、目の前の政局に興味は尽きませんが、もちろん、大事なことは政策です。

 次の総裁に誰がなっても、減税など景気浮揚型の政策になるということを市場が見越して、日経平均など株価は急上昇しています。参院選での野党の躍進などを見ると、国民への「サービス」の強化は避けて通れないところでしょう。

 ただ、個人的にちょっと違和感を持つのは、国民側は、「次の政権が何をしてくれるのか」という「待ち」の姿勢だけで良いのか、という点です。かつて、ケネディ大統領は就任演説の中で、ask not what your country can do for you, ask what you can do for your countryということ、すなわち、国が何をしてくれるかではなく、自分が国のために何が出来るのかを問わねばならない、と説きました。

 国民全体に、国からの「サービス」を待つ姿勢が蔓延していることに懸念があります。われわれ一人ひとりが、社会のために何が出来るかを考える、そういう姿勢が大事だと考えつつ、いくつかの事象について、以下、議論を展開してみたいと思います。

子ども・子育て支援制度を「独身税」と呼ぶ発想の近視眼ぶり

 2026年4月から、「子ども・子育て支援制度」の財源確保のため、公的健康保険料に上乗せして、原則すべての国民から月数百円の徴収が始まります。初年度は1人あたり月約250円程度、4人家族の家庭ならば年間約1.2万円の負担になります。これが2028年には1人あたりの負担額は毎月450円程度に増える予定です。

 この制度は、もう国民の記憶から消えかかっているいわゆる「異次元の少子化対策」の一環として実施されるものですが、子育て世帯には児童手当の増額や妊婦のための支援給付などというメリットがある一方、独身者は負担だけが生じることとなります。そのためか、「独身税」という別名をつけられ、ネットなどでは盛んに揶揄されてきました。「独身者だけが損をする制度じゃないか、おかしいじゃないか」ということでしょう。

 これに対し、三原じゅん子・子ども政策担当大臣は「“独身税”と言い換えることは間違っている」として、強く反論しています。

三原じゅん子・子ども政策担当相(写真:つのだよしお/アフロ)

 私個人の感覚で言えば、この有り様には、世も末だとの思いを禁じえません。