自民党本部(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)
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(尾中 香尚里:ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員)

自民党は「悪夢の」民主党並みに

 石破茂首相(自民党総裁)が辞意を表明し、自民党はまたも総裁選の季節に入った。総裁選の日程も「9月22日告示、10月4日投開票」と決まり、政局大好きなメディアは早くも「戦いの号砲が鳴った!」などと言って、総裁選をあおり始めた。

 自民党が参院選の大敗で衆参ともに少数与党となったことも、内閣支持率が上昇傾向にあった石破首相が党内の権力闘争で事実上引きずり下ろされたことも、裏金問題をめぐるこの党の根深い病巣が放置されていることも、すべて吹っ飛んだように「祭り」に浮かれている。

 馬鹿馬鹿しくてやってられない、と言いたいところだが、実は今回の「石破おろし」の流れを見て、少しだけ面白いと思うことがあった。

 自民党内の動きがまるで、激しい党内対立の末に政権を崩壊させてしまったかつての民主党とそっくりだ、と思えたのだ。

 政権運営の経験が乏しく、党内対立の末に3年あまりで政権から転がり落ちた民主党のことを「悪夢」と呼び、蛇蝎(だかつ)の如く嫌ってきた自民党だが、実は国民から乖離した政治を漫然と続けているうちに、長く政権の座に君臨してきた「資産」を食い潰し、いつの間にか「民主党並み」の政党になってしまった、ということではないか。

 石破首相の辞意表明に先立つ2日、自民党が発表した参院選総括の結びの文言にあった「解党的出直し」。多くのメディアで見出しにもなったこの言葉に、妙な懐かしさを感じた。典型的な「民主党ワード」だ。

 この党が過去に、国政選挙の敗北や何らかの不祥事などでトップが辞任に追い込まれたり、代表選での党内対立が先鋭化したりするたび、何度となくこの言葉を聞いてきたものだ。

 いつの間にかこの言葉が、自民党にこそ似合う言葉になっていたわけか。

 そんなことを意識しながら現在の自民党、特に「石破おろし」と今後の党総裁選の行方を見渡すと、党内にさまざまな「民主党っぽさ」を感じるようになった。時系列に沿って三つ挙げてみたい。