任期途中の抗議辞任を繰り返してきたドイツ
これまでドイツ出身総裁が回避されてきたのは、基本的に緩和局面が常態化する中で突出したタカ派色の総裁が仕切ることによる不安が懸念されたからという事情もあった。総裁ポストでなくとも、過去、ドイツ出身のECB理事はたびたび任期途中で抗議辞任している。総裁ポストを任せられないとの発想は自然でもあった。
しかし、もはや緩和が常態化するような局面ではなく、インフレ懸念も慢性化する中で、ドイツ出身総裁の仕切りが軋轢を生む恐れは小さい。
また、ナーゲル総裁はともかく、現在のシュナーベル理事は過去のドイツ出身理事が途中辞任を繰り返したことの反省から、比較的政治色の薄い、学者出身の経歴が評価されて選出された経緯がある。シュナーベル理事の昇格であれば、政策理事会内でタカ派色が「浮く」という心配もないのではないか(それでも彼女が相対的にタカ派最右翼であることは事実である)。
そもそも「戻ってきた病人(the sick man returns)」と呼ばれ、独り勝ちとはとても言えない経済状態が慢性化しているドイツの状況を踏まえれば、「強過ぎるドイツに総裁ポストを与える」という抵抗感もかつてほどではないだろう。
こうした状況下、例えばシュナーベル次期総裁になったとしても、ECBの政策運営がタカ派へ急旋回する可能性は低い。ただ、それよりもさらに大きな話に影響があるかもしれない。
第二次トランプ政権のドンロー主義が耳目を引く中、「ユーロの基軸通貨性」が相対的に高まる好機が到来しており、ラガルド総裁はこの機を逃さずユーロの国際的な役割を強化すべきであるという情報発信を重ねてきた。こうした動きが次期総裁の下で継続するのかは注目したい。