ECB総裁人事、ドイツは5度目の正直なるか

 毎回、ECB高官人事は国籍パズルが問題になる。次期副総裁については、既に1月19日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)で、ブイチッチ・クロアチア中銀総裁を推薦することで合意ができている。今後の手続きとしては、欧州議会およびECBの政策理事会での意見聴取を経て、欧州理事会(EU首脳会議)が特定多数決で任命する。

 ブイチッチ・クロアチア中銀総裁の副総裁就任は、旧共産圏初の役員会(正副総裁または理事)メンバーとしても大きく報じられた。

 通常、役員会の国籍バランスにダブりが出ることはなく、ドイツ・フランス・イタリアの3大国は必ずメンバーを輩出するのが不文律となってきた(図表)。過去4代の総裁はドイセンベルク(オランダ)、トリシェ(フランス)、ドラギ(イタリア)、ラガルド(フランス)と続いており、ドイツは一度もない。

 ちなみに、副総裁がドイツ人であったこともない。4代目はドイツ人のバイトマン独連銀総裁(当時)が最右翼と言われていたが、同時期に人選を迎えていた欧州委員長がフォンデアライエン独国防相となったため(メルケル前首相がそれを希望したため)、ECB総裁のポストがドイツの手にわたらなかったと言われている。

 5代目にしてついに総裁職がドイツ人の手に渡るとすれば、ナーゲル独連銀総裁またはシュナーベル理事の昇格などが考えられる。仮に、ナーゲル総裁がECB総裁となれば、ドイツ人であるシュナーベル理事は役員会から退くことになるため、ポルトガルなどから後任の候補者が輩出される可能性も出る。

 もっとも、フォンデアライエン欧州委員長の任期は2029年10月31日であるため、ドイツがECB総裁を取った場合、ここまでの最低3年間はドイツが欧州委員会とECBの2トップを仕切るという構図になる。

 フランスの都合で人事が動く以上、暫定的にこうしたアンバランスを許すのか。それともフォンデアライエン欧州委員長が途中辞任に至るのか。または5代目もドイツ人の総裁は見送りか。最終的にはメルツ独首相とマクロン仏大統領の話し合いで決まるだろうが(FT紙もそう報じている)、これからEU防衛債の議論を推進したいフランスの立場に鑑みれば、どちらかと言えば、行政トップである欧州委員長のポストを希望する可能性はある。