「医療費を減らせばいい」ではない
この問題を議論している厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会は2025年11月、患者団体のヒアリングを実施しました。参加したのは、全国がん患者団体連合会、日本難病・疾病団体協議会、日本アレルギー友の会、ささえあい医療人権センターCOMLの4団体。席上、患者団体からは次のような強い懸念が示されました。
「自分の症状が受診すべきかどうかを患者自身が正確に判断することは本質的に不可能。軽症なのか、市販薬で十分な状態なのか、実は重症化の前段階なのか、難病など専門治療が必要なのかを判断できない。これは当然で、医師の診察や検査があって初めて判断できる。市販薬での代替は大きなリスク。医療の始まりは、医師による診察であるべきだ」(日本難病・疾病団体協議会)
「喘息やアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患は、標準治療の下で多くの患者が症状をコントロールでき、普通の人と変わらない生活を送ることが可能になっている。ただ、一部の患者は高額な製剤などを長期に使う必要があり、患者と家族の負担は大きい。特に所得が低い若年層には、生活費を切り詰めて医療費を支払い続ける患者もいる。OTC類似薬を保険適用外とすれば、子育て世代などに長期の重い負担を強いる。子どものアレルギーは、いじめや不登校、虐待、若者のひきこもりなどの要因ともなり、健やかな成長や家庭生活に及ぼす悪影響も強く懸念される」(日本アレルギー友の会)
国家予算における医療費の削減は日本の大きな課題ですが、人の命と健康に関わる重大問題です。「医療費は減らせばいい」という視点だけではなく、他部門の予算全体を見渡し、他に削減すべき予算項目は本当にないのかどうか、幅広い議論が求められています。
フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。高田氏の近著に『調査報道の戦後史 1945-2025』(旬報社)がある。