キューバと同様の「危機」が現実味を帯びるニカラグア
ドミノ倒しは、中米ニカラグアにも及びそうである。
同国は1979年の革命で、親米・右派政権が崩壊し、代わって反米・左翼の反政府武装組織が権力を掌握。キューバに続きアメリカの裏庭に2番目の親ソ・共産国家が誕生する。その後はアメリカが支援する右派ゲリラ「コントラ」と左派政権との熾烈な内戦が冷戦終結前後まで続く。
内戦終結後は一時期を除き左派勢力が政権を担っている。現在のオルテガ大統領は、革命時代の反政府勢力の指導者で、権勢を長年維持する独裁者でもある。
ニカラグアのオルテガ大統領(左)(2022年1月撮影、写真:新華社/共同通信イメージズ)
ニカラグアはキューバと同様、エネルギー資源の大半は、“友達価格”でベネズエラから供給される原油に依存しているため、マドゥロ政権崩壊はオルテガ氏にとっても衝撃的だったはずだ。
仏AFPによれば、ベネズエラ攻撃直後の1月9日、ニカラグアの人権団体の話として、盟友マドゥロ氏の拘束を祝福するメッセージをSNSに掲載した同国民60人以上を、司法手続きを無視して一斉拘束したという。
アメリカが同国を無視できないのは、その地理的優位性で、太平洋とカリブ海(大西洋)にまたがり、国の中央に巨大なニカラグア湖が存在するため、運河開発に最適な地として20世紀初めから触手を伸ばしてきた。
ニカラグア湖と湖岸に並ぶ風力タービン(2021年撮影、写真:新華社/共同通信イメージズ)
1910~1930年代には、実際に軍事占領もするが、結局近隣でパナマ運河が開通したため、ニカラグア運河を建設してもペイしないと判断し、計画倒れとなる。
だが21世紀に入り、パナマ運河の能力限界が問題視されると、ニカラグア運河に再び脚光が集まる。これに飛びついたのが、対米戦略の一環として同国を支援する中国だ。
2010年代に入ると、香港に拠点を置くHKND(香港ニカラグア運河開発投資有限公司)が運河工事に動く。ニカラグア湖を中継する全長約260kmの閘門式(標高差を幾重もの水門で上下させてクリアする方式)で、当初予定では2019年の完成を目指した。
ところが、計画がずさんで頓挫し、現在は白紙になっている。裏庭での中国によるインフラ構想、とりわけ海軍力強化に直結する土木計画を、アメリカは座視できないだろう。
オルテガ政権にとって、キューバと同様に、ベネズエラ産原油の遮断は致命的だが、さらに輪をかけて悩ましいのが、人材枯渇の悪夢だろう。
現在同国は、軍事顧問や治安・司法、教育、行政サービスなど、国家運営の根幹を担う人材の多くをキューバ人が担っている。今後、ベネズエラ攻撃の余波で、キューバが親米国家に返り咲いた場合、ニカラグアは原油遮断に加え、人材枯渇にも見舞われる。そして、オルテガ政権が崩壊して親米政権が誕生するという「ドミノ倒し」のシナリオも現実味を帯びるだろう。