トランプの最終目的は裏庭の“インフラ覇権”を奪い返すこと
今後トランプ氏の“報復”として考えられるのは、まずはブラジルの対米主要輸出品である鉄鋼やアルミニウムへのさらなる課税だろう。昨年7月以来、工業製品に50%の関税を課しているが、中国との経済協力の強化をやめない場合、例えばこれを100%に引き上げるとすれば、ブラジルにとっては相当なダメージとなる。
また、今年10月にブラジルは大統領選を迎えるが、トランプ政権はあからさまに右派勢力にテコ入れして、有力視されるルラ氏の続投を阻止することも考えられるだろう。
しかし、トランプ氏にとってさらに悩ましいのが、中南米の港湾・鉄道など輸送インフラに着々と手を広げる中国の“影”だろう。(過去記事『ロシアと海軍力で張り合うトランプ、だが“裏庭”の中南米はすでに中国の息がかかる港だらけという「不都合な真実」』参照)
特にブラジルにおいて積極的で、港湾・鉄道に対し、出資・建設・借款・賃貸など、あの手この手で進出を図っている。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)などの調査によれば、同国南部に位置し、ブラジル屈指のコーヒー輸出港として知られるパラナグア港や、リオデジャネイロ郊外のアス港など数港に中国資本の息がかかっている。
また2024年に中国の全面援助で完成したペルー・チャンカイ港と、ブラジル中部イリェウス港とを結ぶ南米大陸横断貨物鉄道も、中国とブラジルが共同で計画中だ。
アマゾンの密林地帯を横切る形で、全長5000km超の貨物鉄道を建設し、これを足掛かりに、南米大陸の内陸部に眠るレアアースなど、豊富な天然資源を開発するという一大プロジェクトである。
こうした輸送インフラは、そのまま中国に軍事用として転用される恐れがあるため、近い将来トランプ政権が中国排除のためブラジルに圧力をかける可能性は極めて高い。
戦線を拡大し続けるトランプ流「ドンロー主義」は、西半球を“対中包囲”の基盤として組み替えようとしている。グリーンランドの次に圧力の矛先がどこへ向かうのか。試されるのは、アメリカが「裏庭」とみなす地域秩序そのものだ。
力による西半球の領有を画策するトランプ米大統領(写真:新華社/共同通信イメージズ)







