反トランプのブラジル・ルラ政権にいつ牙を剥くか
そして最大の注目が、南米大陸の大国・ブラジルに対し、トランプ氏がどのタイミングで本格的に噛みつくかだろう。
ブラジルのルラ大統領率いる左派政権は、全方位外交を志向しつつもBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなど10カ国で構成される新興経済国グループ)を重視している。特に中国との経済関係を強めており、トランプ氏とは基本的に馬が合わない。
ブラジルのルラ大統領(2026年1月、ⒸWagner AraAAoJo/Fotoarena via ZUMA Press/共同通信イメージズ)
これに対し、2022年の大統領選で敗れた極右のボルソナロ前大統領は、トランプ氏とは昵懇で、過激な言動が多く性格も似ていることから「南米のトランプ」との異名を持つ。ルラ政権は、選挙結果が不当だと訴えるボルソナロ氏を、クーデター未遂容疑で訴追し、2025年に長期禁固刑に処した。
これに憤慨したトランプ氏は、2025年7月にブラジルに手渡した関税に関する書簡に「(ボルソナロ氏の有罪判決に対し)これは魔女狩りだ」と記し不満をぶちまけたという。そして、同年8月には報復として、ブラジルに50%の高関税を課しルラ政権に圧力をかけた。
だがアメリカは、コーヒーやハンバーガー用の牛肉、オレンジ果汁のかなりの割合がブラジル産だったため、かえって国内の物価高騰を助長する結果となり、数カ月後には、大半の食料品の関税を大幅に引き下げるという失態を演じてしまう。
トランプ氏にとっては悔しい限りだが、ルラ政権に対し、米中貿易戦争で中国に味方していると見なし、近く強力な報復を実施するかもしれないとの観測もある。
大豆の輸出入に関する米中の攻防に関する話だが、そもそも数年前まで中国はアメリカ産大豆の大半を輸入する大得意先だった。だが、第1次トランプ政権時の米中貿易戦争で、中国は大豆を“武器”として使い、アメリカ産大豆にあえて高関税をかけ、中国国内での需要を意図的に激減させて、トランプ政権をけん制した。
この時、中国が必要とする大豆の相当量を賄ったのがブラジルで、一方のアメリカは大豆輸出量の大幅減というダメージを被ってしまう。
第2次トランプ政権での米中貿易戦争でも、似たような攻防を展開しているが、中国は輸入先の分散や国内生産拡大など、万全の態勢で臨む一方、1次政権時にアメリカと約束した大豆の大量購入を意図的に大幅に遅らせ、トランプ氏をいら立たせている。
一方、ブラジルは中国の巨大需要を満たすため大豆生産を急拡大させており、国連食糧農業機関(FAO)などの調査によれば、2015年は約1億トンだったものが、2025年には1億7000万トンを超え、過去最高を記録している。
ブラジル・パラナグア港に停泊する大豆船(2023年6月撮影、ⒸRodolfo Buhrer/Fotoarena via ZUMA Press/共同通信イメージズ)
かつてのアメリカの対中輸出量の大半をブラジルがカバーする状況で、中国という巨大市場を失ったアメリカの大豆農家にとっては、大打撃である。農業従事者はトランプ氏の岩盤支持層でもあるだけに、看過するわけにはいかないだろう。
しかも今年1月23日には、トランプ氏を逆なでするかのように、中国の習近平国家主席ははルラ氏と電話会談を行い、「良きパートナー」と評している。
ブラジルのルラ大統領と関係を深める中国の習近平国家主席(写真:新華社/共同通信イメージズ)