経常収支の黒字縮小で為替には円安方向の圧力

 企業が負債を増やして投資を拡大し、政府が国債発行を増やして財政支出を増やすと、国内の貯蓄超過は減少する。企業が借り、政府が借り、その結果として家計の貯蓄は、その資金として吸収される。

 ところで、国内部門の貯蓄超過は、結局のところ海外に向かっている。開放経済では、国内部門の貯蓄超過と海外部門の投資超過は必ずバランスする。したがって、国内部門の貯蓄超過が減るなら、海外部門の投資超過も減る。

 海外部門の投資超過とは、逆側からみれば国内の居住者が海外の金融資産に投資するということだ。それは経常収支の黒字を意味するが、国内部門の貯蓄超過が縮小するということは、その経常収支黒字が減ることを意味する。

 国内での企業投資や政府支出が増えれば、それは輸入増にもつながるだろうし、これまで国内の居住者が行ってきた海外への投資の一部が国内の金融資産に向かわざるを得ない。そういうかたちで、経常収支黒字が縮小する方向の力が働く。

 現在の日本の経常収支黒字は、海外からの利子・配当の受け取り超を反映する所得収支の大きな黒字と、中期的にはほぼ均衡している貿易収支によっておおむね成り立っている。

 政府支出を起点に設備投資が誘発され、国内経済が活発化する過程では、内需が拡大するので貿易収支は赤字化の方向だし、海外投資に回る資金が減るので、所得収支の黒字にも徐々に縮小方向の力が働くだろう。

 このようなかたちで経常収支の黒字が縮小すれば、為替レートに対しては円安方向の圧力となる。為替市場でも、ここで考えたような変化の道筋が暗黙裡に想定されているのかもしれない。そのため先取り的に円安が進んでいる可能性もある。

 さらに、以上のような変化は、金利にも必ず影響を及ぼす。