金融政策決定会合を終え、記者会見する植田和男・日本銀行総裁。12月19日午後(写真:共同通信社)
12月、利下げを決めた米FRBに対し、日本銀行は利上げに動いた。「基調的なインフレ率が2%になったとは言えない」として実体経済の先行きを慎重に見極めてきた日銀は今後、どんな金融政策を採っていくのか。元日銀の神津多可思・日本証券アナリスト協会専務理事が解説する。(JBpress編集部)
(神津 多可思:日本証券アナリスト協会専務理事)
利下げのFRBと利上げの日銀に共通する考えとは
米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、12月9〜10日、金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるFFレートを0.25%引き下げ、3.50~3.75%とする決定を行った。これは3会合連続の引下げであり、その水準は、2022年以来、一番低くなった。
一方、日本銀行は18〜19日の金融政策決定会合で、政策金利の0.25%引き上げを決定した。1月の会合で同率の引き上げが行われて以来の引き上げで、これにより政策金利は0.75%と30年ぶりの高い水準となった。
このように、米国では利下げ、日本では利上げと、両国の金融政策がすれ違っているようにみえるが、実は本質は似ている。
すなわち、米国では、インフレ圧力がなお強いにもかかわらず、労働需給が弱含んできたことを理由に利下げが行われた。実際、今回のFOMCでは、「0.50%の引き下げ」「0.25%の引き下げ」「現状維持」と政策対応についてメンバーの意見が分かれており、インフレ圧力と雇用情勢のバランスをどうとるか、判断が難しくなっていることが窺える。
他方、日本では、もう3年以上も2%の目標を上回るインフレが続いているにもかかわらず、基調的なインフレ率が目標水準にまで達していないことを理由に、日本銀行は一貫して利上げに慎重だった。利下げした米国と方向こそ異なるが、これも、目の前のインフレよりも、長い目でみた実体経済の安定を重視したということでは共通している。
表面上はすれ違いの動きを見せる日米両国で、どうして本質では似ている対応が採られているのか。