指示の箇条書きが生む優等生的回答
自然文で書かれた指示から、指示する人の意図や優先順位、文脈を自動的に読み取る能力が、格段に向上してきました。AIの方が人に近づいたということです。
「あなたはどの立場で、何を目的に、誰に向けて書いてほしいのか」
こうした情報は、もはや箇条書きに分解しなくても、普通の文章として伝えた方が、むしろ正確に理解されるようになっています。
というのも箇条書きプロンプトの問題点は、命令が「分断」されてしまう点にあるからです。
例えば、「専門家として書く」「初心者向けに」「批判的視点を入れる」といった指示が並列に並ぶと、AIはそれらをすべて均等に守ろうとします。
その結果、どれも中途半端で印象に残らない文章になりがちです。これには、「AIの思考の仕組み」も関係しています。
現在の生成AIは、言葉を順次つなぎ合わせながら考えを深めていく特性(Chain of Thought)を持っています。
しかし、箇条書きで「結論だけを、この形式で書け」と厳しく指定されると、AIは「考えるプロセス」を省略し、形式を埋めることに全力を注いでしまいます。
その結果、見た目は整っているけれど、中身の薄い「優等生的な回答」が出力されてしまうのです。
思考の余白を奪っているのは、実は過度に構造化されたプロンプトそのものである場合が少なくありません。
一方で、平たい文章によるプロンプトでは、どこに力点があるのか、何を最も重視すべきなのかが文脈として伝わります。
実際、論考記事や経営判断に関わる文章を書かせる場合、箇条書きで指示した出力は、どこかマニュアル的で既視感のある内容になりやすい傾向があります。
逆に、人に話しかけるように自然文で指示すると、AIは一段深い整理や視点を提示してくることが少なくありません。
これは偶然ではなく、生成AIが「命令を処理する装置」から「文脈を理解する対話相手」へと進化していることの表れだと考えられます。
それでもなお、旧来のプロンプト技法が強調され続ける背景には、初心者向け解説やノウハウ販売の事情もあるでしょう。
構造化されたプロンプトは分かりやすく、再現もしやすい方法です。ただし、それはあくまで入門段階に適した使い方であり、思考や判断をAIに委ねるフェーズでは、別のアプローチが求められます。