出所:共同通信イメージズ
折りたたみiPhoneを2026年に発売すると噂されるなど、話題に事欠かない米アップル。同社のマーケティング手法について「新製品のみならず、購入者に対して行う実店舗での取り組みにも注目すべき」と語るのは、2025年9月に著書『価値共創のナラティブ』(同文舘出版)を出版した明治大学名誉教授の井上崇通氏だ。アップルはどのような仕掛けでファンの支持を集め続けているのか、同氏に話を聞いた。
相互作用が生み出す「価値共創」の時代へ
――著書『価値共創のナラティブ』では、企業が顧客との相互作用を通じて価値を創出する「価値共創」という考え方について解説しています。今回、どのような理由からこのテーマを選んだのでしょうか。
井上崇通氏(以下敬称略) グローバル化やデジタル化の加速、さらにCOVID-19によるパンデミックなどにより、私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。特にエンドユーザーである消費者を取り巻く状況は、これまでにないほど劇的に変わったと感じています。
かつては、企業が製品やサービスをつくり、顧客に提供する「一方通行」のモデルによってビジネスが成り立っていました。しかし現在は、SNSなどのテクノロジーの進化により、製品やサービスの「受け手」だった顧客が、自ら情報を発信し、企業の意思決定にまで影響を与える存在へと変化しています。
こうした時代において重要なキーワードが「価値共創」です。企業と消費者だけでなく、行政やパートナー企業といった多様なプレイヤーがネットワークを通じて相互に影響し合い、共に価値を創り出す関係性が求められるようになっています。
例えばスマートフォンは年々高性能化していますが、どれだけ機能が優れていても、使いこなすユーザーがいなければ単なる「モノ」に過ぎません。ユーザーがアプリをインストールし、友人とつながったり、仕事に活用したりする行動があってはじめて、スマートフォンは本来の価値を発揮します。
つまり、ユーザーが製品の使用を通じて「どのような価値を引き出しているのか」という視点を抜きにしては、本当の価値は見えてこないのです。むしろ、企業が想定していなかった使い方を通じてユーザー自身が新たな価値を発見し、そのフィードバックをもとに企業がさらなる機能を付加する、という循環が今の時代の価値創出の本質だと考えています。
こうした背景から、今後のビジネスにおいて価値共創は欠かすことのできない視座になると考え、多くの方にそのヒントを届けたいという思いで本書を執筆しました。







