国会議事堂(2022年11月24日撮影、写真:つのだよしお/アフロ)
日本政府が進めるガバメントAI
行政にAIを導入するべきかどうか――。この問いはすでに過去のものになりつつあります。
いま問われているのは、いつ、どのような形で、行政の中にAIを組み込むのかです。
結論から言えば、日本政府が進める「ガバメントAI」は、単なる業務効率化の道具ではありません。人口減少と人手不足が進む中で、行政という制度そのものを持続させるための基盤整備です。
AIを入れるかどうかではなく、AIを前提に行政をどう再設計するかが問われています。この構想を主導しているのが、デジタル庁です。
デジタル庁は、政府全体で安全にAIを活用するための共通基盤として、ガバメントAIの整備を進めています。
その第一歩として提供が始まったのが、デジタル庁職員全員が使うことのできる生成AI利用環境「源内」(プロジェクト名)です。
行政のAI活用というと、チャットボットで問い合わせ対応を自動化する、といった話を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし、デジタル庁が目指しているのは、もっと踏み込んだものです。
行政職員が日々行っている調査、分析、文書作成といった中核業務そのものを、AIによって再設計する試みになります。
なぜ、ここまで本格的なAI活用が必要なのでしょうか。理由は単純で、日本の行政はこれから確実に人手が足りなくなるからです。
少子高齢化により、地方自治体も中央省庁も、従来と同じ人数で同じ仕事を続けることが難しくなりました。
この状況で公共サービスの水準を維持しようとすれば、人の努力に頼るだけでは限界があります。
業務の進め方そのものを変えなければ、仕事が成り立ちません。その前提条件として、AIの活用が避けて通れなくなっているのです。