AI利用を前提に業務を再設計
ここが、民間向けAIツールとの大きな違いです。
この取り組みを現場で統括しているのが、デジタル庁でAI領域を担当する山口真吾参事官です。
山口氏は、AI導入の目的を単なる省力化ではなく、行政の質を維持し高めるための手段だと説明しています。
速く処理することと、正しく判断することを両立させるためにAIを使う、という考え方です。
実際、AIを使った分析支援では、従来は長期間を要していた作業を短期間で行える事例も出ています。
ただし、ここで重要なのは時間短縮そのものではありません。職員が単純作業から解放され、政策立案や判断といった本来の仕事に集中できる点です。
一方で、AIを入れれば自動的に成果が出るわけではありません。
海外では、既存の業務にそのままAIを付け足した結果、期待した効果が出なかった例も報告されています。
業務の流れやデータの持ち方を変えずにAIだけを導入しても、根本的な改善にはつながりにくいのです。
デジタル庁が繰り返し強調しているのは、AIを前提に業務を見直すという発想になります。
業務にAIを足すのではなく、AIがあることを前提に業務を再設計するのです。この順番を間違えると、AI導入は形骸化します。