サンフランシスコで発生した大規模停電(12月21日撮影、写真:ロイター/アフロ)
停電で注目集めた自動運転車
12月20日夜、米サンフランシスコで大規模な停電が発生しました。市内の広い範囲で信号機が停止し、街の交通インフラそのものが一時的に機能不全に陥りました。
このとき、最も注目を集めたのが自動運転車の挙動です。
結論から言えば、今回の出来事は自動運転の失敗ではなく、都市インフラとAIの設計思想のズレを露呈させた出来事でした。
特に影響を受けたのが、サンフランシスコでロボタクシーを運行しているウェイモ(Waymo)です。
信号機が消えた交差点で、同社の車両が次々と停止し、結果として渋滞を引き起こしました。
ウェイモは安全確保を理由に、配車サービスを一時停止する判断を下したのです。この判断は一見すると弱腰に見えるかもしれません。
しかし経営の視点で見ると、ここには極めて一貫した安全設計の思想があります。
今回の停電は、自動運転が社会インフラの一部として動き始めたからこそ起きた問題だと言えるでしょう。
今回の停電では、約13万人規模が影響を受けたと報じられています。信号機が消灯した交差点で、ウェイモの車両はそれを四方向停止交差点として認識しました。
四方向停止とは、すべての車両が交差点の停止線で一時停止し、譲り合いながら進む米国独特の交通ルールです。
ウェイモのAIは、このルールを忠実に守ろうとしました。その結果、周囲に同様の判断をする車両が増え、交差点が事実上フリーズしたのです。
これはAIの誤作動ではありません。むしろ、人間が曖昧にやり過ごしている場面を、AIが文字通りに解釈した結果でした。