シリコンバレーに登場したFDE

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 生成AIが一気に普及し、AI活用は一部の先進企業だけのものではなくなりました。

 しかし、経営の現場を見渡すと、AIを導入したはずなのに業務が変わらない、現場で使われない、PoC(Proof of Concept=概念実証)で止まったままという声が今も多く聞かれます。

 このギャップの正体を理解する上で、シリコンバレーで登場したフォワード・デプロイド・エンジニア(Forward Deployed Engineer、FDE)という存在は極めて示唆的です。

 FDEを一言でいえば、AIやソフトウエアを現場で価値が出るところまで責任を持つエンジニアになります。

 従来のエンジニアは、要件定義を受けてシステムを作り、納品すれば役割を終えることが一般的でした。

 一方でFDEは、納品という概念をほとんど持ちません。

 顧客の業務に入り込み、その場で試し、直し、使われる状態を作ることが仕事です。

 この職種が生まれた背景には、AIの性質そのものがあります。

 AIは万能な魔法の箱ではありません。データの質、業務フロー、現場の判断基準によって、価値が大きく変わります。

 つまり、AIは環境依存性が極めて高い技術なのです。

 生成AIの登場により、モデル自体の性能差は急速に縮まりました。どの企業も高性能なAIを使える時代になった結果、差が出るのは使い方です。

 どの業務に、どのタイミングで、どの精度でAIを使うのか――。この設計を誤ると、どれほど優れたAIでも役に立ちません。

 ここでFDEの役割が浮かび上がります。