OpenAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者、手前)とAMDのリサ・スーCEO(中央)、米上院の商業委員会公聴会で(5月8日撮影、写真:AP/アフロ)

20世紀の石油と似た半導体確保の構図

目次

 前回は、米OpenAIがAMDの株式を最大1割取得できる権利(ワラント=新株予約権)を手にした背景と、その本質がAI資源の上流支配であることを見てきました。

 ここからは視野を世界に広げ、他の主要プレイヤーたちがどのようにこの資源確保の競争に動いているかを整理していきます。

 結論から申し上げますと、現在のAI産業は単なる技術競争ではなく、供給網そのものを囲い込むAI版の地政学へと移行しています。

 私は各国の動きを研究するたびに、まるで石油を巡る20世紀の競争を再び見ているような感覚になります。

 ただし、今回の資源は地下に埋まっていません。データセンターに設置されたGPU(Graphics Processing Unit=画像処理装置)のラックの中に存在しているのです。

 まず触れなければならないのが、現在、GPU市場の絶対王者であるNVIDIAです。

 NVIDIAは依然としてAI向けGPUの供給で圧倒的シェアを持ち、同社の「H100」シリーズは世界のAI企業が奪い合うほどの需要を誇っています。

 しかし、世界的にGPU需要が膨張する中、NVIDIAは主要顧客との専用ライン設置や優先供給契約を進めています。

 特に、マイクロソフト、グーグル、アマゾン・ドット・コムなどのクラウド大手には、他社より優先的に供給する体制が整えられているのです。

 つまり、日本企業がGPUを調達しようとしても、世界の巨大クラウド勢の後ろに並ばなければならない状況が生まれています。

 この構造は、AIの主導権を持てる国と企業をさらに限定しています。