管理職不在の「AIネイティブ」時代へ

 この研究では、組織のマネジメント機能がこの変化に追いついていない現状も指摘する。

 私たちはこれまで、共感や理解を通じて人間の潜在能力を最大限に引き出すマネジメント手法を学んできた。だが、感情を持たないAIエージェントの軍団を管理する術(すべ)は知らない。

 一部では「若手がAIエージェントを束ねる新時代のマネジャーになる」という楽観論もある。

 これについて、ステイブ氏は懐疑的だ。若手にはまだ、AIを監督し、その出力を批判的に評価するだけの専門的経験値(ドメイン知識)が備わっていないからだという。

2026年の課題:ツール導入から「組織再設計」へ

 ハーバード大の研究が最終的に示唆するもの。それは、AI活用の成否を分けるのはツールの性能ではなく、「組織再設計(Org Redesign)」の巧拙であるという点だ。

 単にメモ取りをAIにさせて時間を浮かす段階は終わった。私たちは、AIが得意な領域(速度、統合)と、人間が勝る領域(多様性、創造性、倫理的判断)を冷徹に見極める必要がある。

 その上で、業務プロセスそのものを書き換えなければならない。そして何より、AIによって形骸化しかねない「若手の修練の場」を、意図的にどう設計し直すかが問われている。

 MITの研究成果が「氷山の全貌」を可視化したとすれば、このハーバード大の研究は、その危険水域を乗り切るための航海図を示しているといえるだろう。

 ただし、その航路を進むためには、我々が乗る船そのものを造り変える必要があるのかもしれない。

 (参考・関連記事)「AIによる「静かなる代替」、米労働市場の1割超に波及か - MITが可視化した「氷山」の全貌 | JBpress (ジェイビープレス)

 (参考・関連記事)「AIが若者の雇用を揺るがす - スタンフォード大が大規模データで実証、キャリア形成に新たな課題 | JBpress (ジェイビープレス)