NVIDIAの生先端チップ、ブラックウェル(3月19日撮影、写真:ロイター/アフロ)
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 米国のドナルド・トランプ大統領が、米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)の主力AI半導体「H200」について、中国への輸出を条件付きで容認すると発表してから2週間余りが経過した。

 同氏のSNS「トゥルース・ソーシャル」で12月初旬に明らかにされたこの方針は、米政府が輸出企業から売上高の25%を「手数料」として徴収するという異例の枠組みで注目を集めた。

 最先端品「Blackwell(ブラックウェル)」の流出は防ぎつつ、準先端品の供給で中国市場における米国製技術のシェアを維持し、中国の国産化(自給自足)を遅らせる狙いが透ける。

「AIバブル」の懸念を好決算で払拭したエヌビディアにとって、中国市場へのアクセス回復は悲願だった。

 しかし、この「ディール(取引)」は、米国内の対中強硬派や安全保障の専門家から強い反発を招いており、実際の運用フェーズにおいて曲折が予想される。

25%の国庫納付と「H200」の立ち位置

 その最大のポイントは、輸出規制の緩和と引き換えに、米国政府が民間企業の売上から直接的な利益を得るという仕組みにある。

 トランプ氏はSNSで「25%は米国に支払われる」と明言した。英ロイター通信によると、この資金は、台湾から米国への輸入税という形で徴収される見通しだ。

 また、チップは中国へ輸出される前に、米国内でセキュリティー審査を経るプロセスが想定されている。8月時点では15%の徴収案が報じられていたが、最終的にはより高い料率で決着した形だ。

 対象となったH200は、生成AIの学習や推論において高い性能を発揮するが、エヌビディアの最新鋭チップであるBlackwellの1世代前のアーキテクチャーに属する。

 バイデン前政権下で輸出が禁じられていたH200を解禁することで、米国はエヌビディアの収益機会を回復させる。

 さらに米政府は、米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)や米インテルといった米企業にも同様の措置を適用する見通しで、これら米企業の売上拡大も後押しする(米CNBC)。

 同時に、その収益の一部を国家に還流させることで「米国の雇用創出と納税者の利益」につなげるという論理だ。