ニューヨーク・マンハッタンにあるニューヨーク・タイムズが入っているビル(9月16日撮影、写真:ロイター/アフロ)
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 2025年も暮れようとする中、生成AIと報道機関の関係性を決定づける大きな動きが相次いだ。

 今月上旬、米メタは米CNNや仏紙ルモンドなど米欧の主要メディアとの提携を発表し、対話型AIへのリアルタイムニュース導入に舵を切った。

 その一方で、同じタイミングで米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、AI検索の米新興企業パープレキシティを著作権侵害で提訴した。

 大手テック企業がコンテンツ使用料を支払う「協調」の道を選ぶ一方、データの無断利用を続ける新興勢力との「対立」は法廷闘争へと激化している。

 12月5日に起きたこの2つの事象は、生成AIのエコシステムが「データの対価」を前提としたフェーズへ移行しつつあることを示唆している。

メタ、ニュース配信で「信頼性」への回帰

 メタは12月5日、同社のAIアシスタント「Meta AI」において、最新ニュースを提供する機能を強化すると発表した。

 これに伴い、英ロイター通信に加え、CNN、米フォックスニュース、米紙USAトゥデイ、ルモンド、米誌ピープルといった複数のメディア大手と提携を結んだ。

 これまでメタのAIは、リアルタイム時事情報への対応に課題を抱えていた。今回の提携により、ユーザーがニュース関連の質問をした際、提携メディアの記事に基づいた正確な回答と、情報源へのリンクを提示することが可能になる。

 メタの狙いは明確だ。

 競合する「Chat(チャット)GPT」を擁する米オープンAIや、米グーグルに対抗するため、AIの弱点である「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」を減らし、実用性を高めることにある。

 背景には、同社の大規模言語モデル(LLM)「Llama(ラマ)4」の市場評価が芳しくなかったことへの焦りもあるとされる。

 メタバース事業の予算縮小が報じられる中、同社は経営資源をAIの実用化と品質向上へ集中させている。

 メディア側にとっても、巨大プラットフォームからのトラフィック流入とライセンス収入は、広告モデルが揺らぐ中で貴重な収益源となる。

 メタはかつて「Facebook News」タブを廃止し、ニュースメディアと距離を置く姿勢を見せていたが、生成AIという新たな文脈で再び手を組む選択をした。