生成AIの登場から数年、その雇用への影響を巡る議論は、期待と不安の間で揺れ動いてきた。
今秋、多くの企業がAIを理由とした人員削減を発表した際、専門家からは「経営判断の責任転嫁に過ぎない」との指摘も上がった。
しかし、米CNBCによると、11月下旬に米マサチューセッツ工科大学(MIT)と米オークリッジ国立研究所(ORNL)が発表した衝撃的な研究結果は、私たちがこれまで見ていたものが、文字通り「氷山の一角」に過ぎなかったことを示唆している。
AIによる労働代替の波は、テック業界を超え、米労働市場の深層へと静かに、しかし確実に浸透し始めている。
「見えている」混乱、わずか2%
MITの研究チームが開発した労働シミュレーションツール「アイスバーグ・インデックス(Iceberg Index)」が導き出した結論は、具体的かつ広範だ。
現在のAI技術は既に、米国の労働市場全体の11.7%を代替可能な水準に達しており、賃金換算で最大1兆2000億ドル(約188兆円)に影響を及ぼす可能性があるという。
この「アイスバーグ(氷山)」という名称が示唆する現実は重い。
研究によると、これまでニュースのヘッドラインを飾ってきたテック企業やIT部門でのレイオフや職務変更は、影響全体のわずか2.2%(約2110億ドル)に過ぎない。
水面下に潜む残りの巨大な塊。それが、人事、物流、経理・財務、業務管理といった、あらゆる産業に共通する「定型的な事務機能」だ。
これらは自動化の予測においてしばしば見過ごされてきたが、経済活動の基盤であり、ここにこそAIによる構造的な代替圧力が集中していることが明らかになった。
