AWSのマット・ガーマンCEO(12月3日撮影、写真:ロイター/アフロ)
米アマゾン・ドット・コムが、AI開発の基盤となるインフラ投資を加速させている。
同社は11月下旬、米政府機関向けのAIおよびスーパーコンピューティング機能の拡張に、最大500億ドル(約7兆8000億円)を投じると発表した。
11月初旬には生成AI最大手の米オープンAIがアマゾンのクラウドサービスを利用する巨額契約を結んだことが明らかになったばかりだ。民間トップ企業からの受注獲得に続き、国家安全保障に関わる公共部門においても自ら巨費を投じてインフラを増強する動きだ。
官民双方で「計算資源」の圧倒的なシェアを握ろうとするアマゾンの野心が鮮明になっている。
「機密」領域に1.3ギガワット増強
アマゾンのクラウド事業部門であるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の発表によると、今回の投資は2026年に着工予定のデータセンター建設に向けられる。
最大の目的は、国防総省や情報機関などが利用する「AWS Top Secret(最高機密)」や「AWS Secret(機密)」といった、高度なセキュリティが要求されるリージョン(データセンター群)の能力拡張だ。
計画では、新たに約1.3GW(ギガワット)分の電力容量に相当する計算能力を追加する。
英ロイター通信によると、1GWは一般家庭約75万世帯分の電力に相当する規模だ。ここに、米エヌビディア製の最新GPU(画像処理半導体)に加え、アマゾンが自社開発したAI半導体「Trainium(トレーニアム)」を大量配備する。
これにより米政府機関は、アマゾンの「Amazon Nova(アマゾン・ノバ)」や、提携する米アンソロピックの「Claude(クロード)」といった最先端AIモデルを、機密環境下で安全に利用できるようになる。
AWSのマット・ガーマンCEO(最高経営責任者)は、「政府の変革の妨げとなっていた技術的な障壁を取り除く」とその意義を強調した。