「対価なき利用」の終焉と今後の展望

 今月起きたこれら一連の動きから読み取れるのは、生成AI開発における「無法地帯」的なデータ利用の終焉である。

 オープンAIは既に、ニューズ社や独アクセル・シュプリンガー、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)などと複数年のライセンス契約を結び、データの正規利用へと舵を切っている。

 今回、メタがそれに続いたことで、主要なAI開発企業は「パブリッシャーに対価を支払って高品質なデータを買う」という新たな秩序を形成しつつある。

 一方で、パープレキシティのような新興勢力は岐路に立たされている。

 検索エンジンの代替として「回答」を直接提示する彼らの手法は、従来の検索エンジンのように元記事へ送客するのではなく、その機会を奪うものである。

 そのため、メディア側からは「共存」ではなく「寄生」とみなされ、法的措置を含めた徹底抗戦を招いている。

 資金力のある巨大テック企業はライセンス料を支払う体力があるが、スタートアップ企業がすべてのメディアと個別に契約を結び、かつ継続的に対価を支払い続けることは財務的に困難だ。

 今後、AI業界は「正規のライセンス契約を持つ大手」と「法的リスクを抱えながら綱渡りを続ける新興」への二極化が進む可能性がある。

 メディア側も一枚岩ではない。

 ニューズ社のようにオープンAIとは手を組みつつパープレキシティとは戦う「是々非々」の戦略を取る企業もあれば、NYTのように原則としてAI利用に厳格な態度を取る企業もある。

 2026年に向けて、司法がAIによる著作物の利用にどのような判断を下すかが焦点となる。

 しかし、判決を待たずして、ビジネスの現場では「高品質なニュースには値札がつく」というルールが、不可逆的な潮流となりつつある。

 (参考・関連記事)「米メディア大手とAI新興の関係、紛争もあるが提携も | JBpress (ジェイビープレス)