「記事の盗用」か「革新」か、NYTがパープレキシティを提訴

 メタが協調路線を打ち出した同日、NYTは対照的な動きを見せた。

 生成AIを用いた検索サービスを提供するパープレキシティに対し、著作権侵害などを理由に訴訟を提起したのである。

 訴状によると、NYTはパープレキシティが許可なく記事や動画、ポッドキャストなどのコンテンツを「スクレイピング(自動収集)」し、自社のAIモデルの回答生成に利用していると主張している。

 特に問題視されたのは、記事の内容を一字一句、あるいはそれに近い形で再現し、さらにNYTが報じていない情報を捏造して同紙に帰属させるケースだ。

 NYT側は、これが知的財産権の侵害にあたるとして、損害賠償とコンテンツ利用の差し止めを求めている。また、米地方紙シカゴ・トリビューンも同様に提訴に踏み切った。

 パープレキシティを巡っては、以前からメディアとの摩擦が絶えなかった。

 2024年10月には、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の発行元である米ダウ・ジョーンズと、米大衆紙ニューヨーク・ポスト(いずれも米ニューズ・コーポレーション傘下)が同社を提訴している。

 当時、パープレキシティは企業価値が80億ドル(約1兆2000億円)を超えると試算されるなど、投資家からの期待を集めるユニコーン企業であったが、その成長モデルは「他人のコンテンツを流用して利益を得ている」との批判が根強くあった。

 NYTも、2023年末にオープンAIと米マイクロソフトを提訴しており、AI企業に対する強硬姿勢を崩していない。

 今回のパープレキシティに対する訴訟提起は、たとえ技術革新という大義名分があろうとも、「フリーライド(ただ乗り)」は許さないというメディア業界の総意を改めて示した形だ。