9月9日撮影、写真:ロイター/アフロ
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 米半導体大手エヌビディア(NVIDIA)が、半導体設計支援ソフト(EDA)大手の米シノプシス(Synopsys)に対し、20億ドル(約3100億円)の出資と戦略的提携の拡大を発表してから2週間余りが経過した。

 12月1日に公表されたこの動きは、単なる資金提供にとどまらず、製造業やハイテク産業における設計開発のプロセスを、従来のCPU(中央演算処理装置)中心からGPU(画像処理半導体)主導の「アクセラレーテッドコンピューティング」へと転換させる狙いがある。

 生成AIブームで得た潤沢な資金を「産業AI」の実装へと還流させるエヌビディアのエコシステム戦略が鮮明になっている。

「数週間」の作業を「数時間」へ

 今回の提携の核心は、半導体のみならず、航空宇宙、自動車、産業機器といった幅広い分野のエンジニアリング工程における「時間」と「コスト」の圧縮だ。

 現代の製品開発、特に高度なチップやシステムの設計においては、シミュレーション(模擬実験)に膨大な計算リソースと時間を要する。

 両社によると、エヌビディアのGPUとAI技術をシノプシスの産業用ソフトウエアに統合することで、これまでCPUベースの計算で数週間かかっていた作業を、数時間レベルにまで短縮できる可能性があるという。

 エヌビディアのジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)は米CNBCに対し、この変化を「プラットフォームの移行期」と表現した。

「古いやり方も存続はするが、世界はアクセラレーテッドコンピューティングという新しい手法へシフトしている」と述べ、汎用的な計算処理から、AIに特化した高速処理への移行が不可避であるとの認識を示した。

 具体的には、自律的にタスクを遂行する「エージェンティックAI(Agentic AI)」や、物理世界をデジタル空間に再現する「デジタルツイン」技術を活用し、設計から検証までのプロセスの劇的効率化を目指す。