パリで開かれたAIアクションサミットに出席したインドのナレンドラ・モディ首相。右は米国のJ・D・バンス副大統領(2025年2月11日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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 米アマゾン・ドット・コムが、世界最大の人口を擁するインドへの傾斜を強めている。

 同社は先月(2025年12月)、2030年までにインド事業に対して350億米ドル(約5兆4500億円)を超える追加投資を行うと発表した

 狙いは明白だ。米マイクロソフトなどライバル勢がひしめくアジア市場において、AIインフラと輸出拠点の主導権を握ることにある。

 アンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は昨年秋、本国での組織内官僚主義打破と人員削減を断行したが、それにより捻出した経営資源を成長エンジンである「インド」と「AI」へシフトさせている構図が鮮明になった。

マイクロソフトと「兆円規模」の投資合戦

「我々はインドの成長の触媒であり続ける」

 アマゾンの新興国市場担当シニア・バイス・プレジデント、アミット・アガルワル氏は先月ニューデリーで開かれたイベントでそう強調した。

 同社は、350億ドルの投資計画を2030年にかけて順次実施する。その主な使途は、データセンターなどのAIインフラの拡充、物流網の強化、そして中小企業のデジタル化支援だ。

 同社はこれまでにインドへ約400億ドル(約6兆2200億円)を投じている。今回の追加分が上積みされることで、同社の対印投資規模は競合他社と比較しても突出したものとなる。

 このタイミングでの発表は、ライバルとの競争がいっそう激化していることを印象づけるものだ。

 アマゾンの発表と同日、米マイクロソフトもインドのAI・クラウドインフラに2030年までに175億ドル(約2兆7200億円)を投じると発表していた

 米巨大テック企業(ビッグテック)2社だけで、日本円にして8兆円規模の資金が南アジアの一国に流れ込むことになる。

 この動きについて、米ウェドブッシュ証券のダニエル・アイブス氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、「ビッグテックによるインドへの大きな賭けであり、AI革命が到来することを物語っている」と指摘する。

 背景にあるのは、米中対立によるサプライチェーンの分断と、「ソブリンAI(主権AI)」への需要だ。

 インド政府は輸入半導体への依存脱却と自国での計算能力(コンピュート)確保を急いでおり、テック各社にとってインドは単なる「巨大市場」から、地政学リスク回避のための「戦略的ハブ」へと変化している。