欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(2025年12月19日撮影、欧州委員会のサイトより)
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会が2025年12月上旬、米グーグルに対し、AIモデルの学習におけるオンラインコンテンツの利用を巡る正式な調査を開始した。
生成AIの開発競争が激化する中、プラットフォーマーによる報道機関やクリエーターの著作物の利用が急拡大している。
こうした著作物が「適正な対価」なしに利用される慣行に対し、EUが競争法(独占禁止法)の観点から「待った」をかけた。
今回の調査は、AI時代の新たな知的財産と競争のルールを問う試金石となる。一方で、発足からまもなく1年を迎える第2次トランプ米政権との間でくすぶる「デジタル貿易摩擦」の火種を大きくする可能性もある。
「AIオーバービュー」とYouTubeが標的
欧州委が問題視したのは、グーグルが展開する「AIオーバービュー(AIによる概要)」などの検索機能と、動画共有サイト「YouTube」におけるデータ利用の実態だ。
AIオーバービューは、検索結果の上部にAIが生成した要約文を表示する機能だが、その生成にはウエブパブリッシャー(サイト運営事業者)のコンテンツが利用されている。
欧州委は、グーグルがパブリッシャーに対し、記事などが利用されることを拒否する選択肢を十分に与えていないと指摘した。
加えて、利用に対する適切な対価も支払っていない疑いがあるとしている。
パブリッシャーが利用を拒否すれば、Google検索からの流入(トラフィック)そのものを失うリスクがあり、事実上、コンテンツの提供を強制されている恐れがあるという。
同様にYouTubeについても、投稿された動画がグーグルの生成AIモデルの学習に利用されている点が焦点となった。
クリエーターが利用を拒否する手段が乏しい一方、競合他社のAI開発者がYouTubeのデータを学習に利用することは規約で禁じている。
欧州委は、これがグーグル自体のAI開発を不当に優遇し、競合他社を排除する「支配的地位の乱用」にあたる可能性があるとみている。