「大地震は想定済み」としながらデータを不正に操作

 中部電力は、当初は三重県に原発を作るつもりだった。1963年に熊野灘の候補地点を発表したものの、地元の強い反対で断念。67年になって静岡県浜岡町(現・御前崎市)で原発計画を進めると発表し、68年には用地取得を終えた。

 今でこそ南海トラフ地震のリスクは広く認識されるようになったが、プレート同士の衝突という現象を明らかにしたプレートテクトニクスが考え出されたのは1960年代の後半。東海地方でM8級の大地震が起きると茂木さんが指摘したのは69年のことだ。

 中部電力は、浜岡原発で想定している揺れの大きさを最大450ガルとして建設していた*5。地震の研究が進むにつれ、それでは足りないことがわかって何度も想定を見直し、現在は最大1200ガルとして申請し、原子力規制委員会の審査で合格していた*6

*5 中部電力 浜岡原子力発電所 原子炉設置変更許可申請書(2号炉増設)1972年9月 添付書類 8-106

*6 https://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/hamaoka/anzen/shinkisei/shinsajokyo/kijunjishindou20231101/

 しかしそれでもまだ過小評価だったわけだ。450ガル想定で造ったプラントを、後から補強するにも限度があり、不正な手段を使ってでも、想定する揺れの数値を低く抑えざるを得なかったのかもしれない。

「大地震は想定済み」とずっと宣伝してきた中部電力に対し、茂木さんは「大地震のことはわかっていないことが多い。地震のたびに、想定外のことが起きている」と技術者の慢心も心配していた。ところが中部電力は、慢心どころか、データを意図的に操作して想定を小さくする悪質な手口を使っていたわけだ。