(科学ジャーナリスト:添田 孝史)
30年前の阪神・淡路大震災で、神戸市の中心部は震度7に襲われた。研究者は震災の21年前に活断層による大地震を警告して報告書を神戸市に送っていたが、神戸市は聞き入れず、震度5強しか想定しなかった。それは住宅や水道の耐震化など備えの不十分さにつながり、多くの死者を生じさせた。
2024年1月の能登半島地震も事情が似ている。研究者は14年前に震源の活断層を見つけていた*1が、石川県は地震の研究がどんどん進んでいたのに27年前に策定した被害想定を見直ししておらず、それが被害の拡大につながった可能性がある。
地震の最新の研究成果を、地元の行政が防災に生かさない。その失敗はなぜ繰り返されたのだろうか。
なぜ揺れの想定を見直さなかったのか
2024年1月1日に発生した能登半島地震(M7.6)で、石川県では死者408人、全壊6058棟の被害があった(24年10月15日現在)*2。石川県が能登半島沖の地震で1997年に予測していた死者は7人、全壊は120棟*3だったから、予測がとても甘かったことがわかる。
*2 石川県「令和6年能登半島地震による人的・建物被害の状況について」
*3 石川県地域防災計画
石川県が予測していた地震の規模はM7で、それも能登半島から10〜20km離れた海底の活断層が揺れると予測していた。一方、実際に起きた地震では、活断層は能登半島の直下にあった(地図1)。
この能登半島直下の活断層は、2010年に産業技術総合研究所が報告していた。石川県も、それを知っていて、津波の想定にはその報告を取り入れていたが、揺れの予測は見直さず、そのままだった。
なぜ揺れの想定は見直されなかったのか。