- 石川県輪島市門前町浦上地区は、約210世帯・430人が居住する26の集落からなる。元日の地震で住宅が全半壊し、現在は150世帯ほどに減った。道路の多くは寸断されたままで、山間部から平野部への集団移住も検討されている。
- 9月には豪雨が襲い、多くの流木が流れ込んだ。「二次災害」により復興は極めて困難な状況に陥っている。
- 10月6日、同地区を取りまとめる喜田充・区長会長(75)に現地でインタビューした。喜田氏は浦上地区の平野にある公民館近くに「災害公営住宅」を建設するべきだと説く。豪雨による水害は「山林の保水力が低下した人災」とも指摘し、同様の災害は山間部ならどこでも起こり得ると警鐘を鳴らす。前・後編でお届けする。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
>>【後編】見えぬ未来「ゴーストタウンか」…放置された山林が崩れ壊滅的被害、限界集落の区長が訴える窮状
「家にはもう戻れない」浦上地区の住民
──喜田さんは今年8月、輪島市長に「災害公営住宅」を浦上地区に建設することを求めました。居住が困難な山間部からの集団移住は避けられない状況でしょうか。
喜田充・輪島市門前町浦上地区区長会長(以下、敬称略):まずは浦上地区の被害状況を説明しましょう。
26の集落のうち約17〜18が山間地にあり、残りは平野に位置しています。元日の地震で住宅の多くが全半壊し、周辺の道路も寸断されました。
山間部にある中屋という集落では、11世帯のうち8世帯がすでに浦上公民館近くに集団移住することが決まっています。山間地にある集落は元々地滑りが発生しやすい地帯で、現在も電気・水道が止まったままの集落が多い。
元日の地震と今回の水害で、仮設住宅に住んでいる人も「家に帰るのはもう無理」というのが現状です。
集団で移住することが決まっていない集落でも、世帯ごとに輪島市の仮設住宅に入居したり、金沢に引っ越したりと、55〜60世帯がすでに浦上を離れました。例えば、ここ(公民館)から約4km離れた11世帯で構成するある集落では、すでに元の家に住んでいる人はゼロです。