電力会社は地震の想定をめぐって、しばしば不正な手段を使う。たとえば東電は、津波が敷地を大きく超える計算結果を2008年には得ていた。しかしすぐには想定見直しをしないことを決め、「学会で研究する」という名目で先延ばししたり、「研究より対策すべきフェーズだ」という研究者の意見を規制当局に伝えなかった*2りして、2011年の事故を引き起こした。「対策は不可避」と認識していたのに、関係者に根回ししたり、都合の悪い事実を隠したりした結果だった。

*2 https://level7online.jp/2021/0312/

 当時、根回しと想定先送りを担当させられていた東電の技術者は、そのような方法を取ることについて「世間(自治体、マスコミ…)がなるほどというような説明がすぐには思いつきません」と悲痛な文面のメールを上司に送っていた*3

*3 https://level7online.jp/2021/20211209/ この記事の写真3

 中部電力によると、2018年以降、意図的に不正な方法を使ってきたという。東電事故からわずか7年で、電力会社が、また不公正な手続きで地震の想定を誤魔化していることに戦慄を覚える。

23年前から警告されている「地震の危険度が世界一」の原発

 今から23年前、地震の国際学会*4で、元東大地震研究所長の茂木清夫さんの講演を聞いた。茂木さんは、浜岡原発について「直下でマグニチュード(M)8の地震が起きる。極めて危険な状況だ」と警告した。

*4 https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F8766987&contentNo=1

 浜岡原発は、敷地の直下にプレート境界がある。「M8の地震が起きるとわかっているところなのに、原発があるのはここだけ」と、地震の分布と原発の位置を重ねた世界地図を示しながら、茂木さんは強調した。

南海トラフ巨大地震の想定震源域と浜岡原発の位置(大阪管区気象台の地図に加筆)

 福島第一原発の場合、大地震をもたらした震源域は、敷地から100キロ以上離れていた。一方、浜岡は敷地の真下、十数キロのところある。東電事故後、全国の原発のうち、浜岡原発だけは、政府はすぐに停止するよう要請した。そのくらいリスクが大きいと考えているのだ。

 問題の根っこは、中部電力が、そこが巨大地震の巣であることを知らずに建設地を決めてしまったことにある。