大峯山・山上ヶ岳は一帯に「女人結界」
ここで、女人禁制が敷かれた主な山岳聖地を紹介しよう。日本各地の女人禁制の山の歴史と、現在の運用を整理してみた。
【大峯山・山上ヶ岳(奈良県)】
修験道の根本道場。役行者による開山の後、山上ヶ岳一帯に「女人結界」が設けられた。1872(明治5)年の女人禁制撤廃布告後も慣行として女人禁制が継続している。現在では、戸開け期間(例年5月3日〜9月23日)に限り入山が可能であるが、「男性のみ入山可」を明示している。各登山口には女人結界門を設置している。地元である天川村の公式サイトでも「宗教上の理由で今なお女人禁制」と記されている。
【石鎚山(愛媛県)】
修験の山として中世以来の女人禁制伝承を持つ。通年で一般開放しているが、毎年7月1日の「お山開き」初日については「宗教上の理由で女性は登拝不可」としている。
【富士山(山梨県・静岡県)】
江戸時代まで吉田口2合目付近に「女人結界」(女人天上)などの遥拝(ようはい)点を設け、女性はそれ以上は山に入れなかった。1872(明治5)年の布告の女人禁制撤廃によって解禁される。現在では男女ともに登山が可能。
【立山(富山県)】
江戸時代まで女人禁制が敷かれた。女性は山岳修行に代わる救済儀礼として、芦峅寺(あしくらじ)で「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」に参加し現世・来世を擬似往還する作法が整えられた。
【白山(石川県・岐阜県・福井県)】
富士山や立山と並ぶ「日本三霊山」の一つとして知られる。女人禁制は明治初期に解けた。現在は男女とも登拝可能である。
【出羽三山(山形県、羽黒山・月山・湯殿山)】
修験道の三山。江戸時代までは湯殿山を中心に女人禁制色が強かった。出羽三山のうち、月山および湯殿山の女人禁制は1877(明治10)年に解禁された。現在は、三山とも参拝可能である。
【高野山(和歌山県)】
中世、近世を通じて「女人結界」を設けた。7つの登山口に女人堂を設け、女性は周縁の「女人道」から遥拝した。明治期の全国的な禁制撤廃の後も、内部規定により居住・参入に制限が残った。現在では、参拝、宿坊への宿泊とも男女とも可。
【御嶽山(長野県・岐阜県)】
黒沢口8合目に「女人堂」という山小屋・堂宇が置かれ、かつて女性の立ち入りはそこまでとされた。1877(明治10)年頃から、女性登拝は自由化された。現在、登山自体は男女ともに可。女人堂は山小屋として営業し、その歴史的背景を解説している。
【後編を読む】
「女性差別か、伝統か」今なお大峯山系・山上ヶ岳の女人禁制が解かれない歴史的背景とは
