松本清張(1977年10月撮影、写真:Fujifotos/アフロ)

柚木麻子、村田沙耶香、村上春樹らと並ぶ、昭和の大作家「松本清張」

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 海外の主要な文学賞を受賞するなど、日本の小説の海外における注目度が高まっている。新しいところでは、今年7月に王谷晶氏の『ババヤガの夜』が英国のダガー賞*1・翻訳部門を受賞。日本人作家として初の快挙だった。受賞はならなかったものの同賞の最終候補に残っていた柚木麻子氏の『BUTTER』は、英国で45万部を超えるベストセラーとなっている。

*1:世界最高峰のミステリー文学賞とされる「英国推理作家協会賞」

 ほかにも毎年ノーベル文学賞のブックメーカーのオッズに名前が挙がる村上春樹氏、多和田葉子氏に加え、英国の文学賞「ブッカー賞」の翻訳書部門「国際ブッカー賞」の最終候補になったことのある川上弘美氏、川上未映子氏、小川洋子氏など、日本人作家の小説は英語圏で広く読まれている。中でも、とりわけ英国では近年、日本の小説の注目度が上がっている。

 たとえば2024年の英国の翻訳小説のベストセラーランキングを見ると、トップ40のうち4割を日本の小説が占めている(Nielsen BookScan調査)。

 1位は前述した『BUTTER』(柚木麻子著)で、2位『コーヒーが冷めないうちに』(川口俊和著)、3位『お探し物は図書室まで』(青山美智子著)と、日本でも近年話題になった作品が続く。ランキングには村上春樹氏や村田沙耶香氏の著作も並ぶ。

 そんな中で私の目を惹いたのは、16位にランキングされている松本清張『点と線』だ。

 英国では近年、松本清張作品の英訳版が続々と出版され、人気を博しているのだという*2。松本清張といえば昭和の大ベストセラー作家で、『点と線』が刊行されたのは1958年である。65年以上たった今も、日本はもとより海外でも読み継がれている松本清張の普遍性に感じ入ったのだ。

*2:英紙が見た「英国の松本清張ブーム」と「日本のミステリーの独特さ」(COURRiER Japon、2025.9.21)