心情等伝達制度を利用して良かったと語る遺族の声

藤井:刑務所は、この制度を通して受刑者の心理をそれなりに把握できます。法務省矯正局の回答は、心情等伝達制度のやり取りの記録を更生プログラムに活かしたいという意味だと思いますが、具体的にどれだけの人的支援を投入して、どのようなプログラムを組んでいくのかは明らかにされていません。受刑者のプライバシーの問題もありますから、どのようなことがされているのかは刑務所も明かせないのでしょう。

 心情等伝達制度はもともと被害者のための制度ではなく、加害者の更生の一助になるという理由から始められた制度です。ある意味では、被害者からの言葉を通して加害者を更生に導くことを目的にしているのです。

 一方で、これも最近のことですが、拘禁刑(※)の実施が始まりました。刑務所の中で受刑者たちを変えようという流れが始まっている。矯正・更生のプログラムはもっと充実させてほしいですね。そういう機会を充実させていかないと、加害者はなかなか変わることができないと思います。

※拘禁刑:2025年6月1日から施行された新制度。従来の懲役刑や禁固刑を1つにした制度。受刑者の状況や性格を考慮し、収監して作業労働を強いるだけではなく、教育プログラム、職業訓練、医療サポートなども与える。

──心情等伝達制度について、被害者や遺族が知らされていないケースがほとんどだったと書かれています。本来、誰がこうした制度の存在を被害者や遺族に伝えるべきだと思いますか?

藤井:まず行政ですよね。事件が起きた時に、最初に被害者が接するのは警察官ですから、犯人が逮捕されたあとにタイミングを見計らって被害者担当の警察官が伝えればいい。あるいは、その地域を管轄する更生保護委員会、保護観察所、市役所や区役所など、あらゆるところで周知を徹底するべきです。

 実際にはまだこうした周知は行われていませんし、被害者の自助グループや弁護士などとのやり取りの中でこの制度について知るケースがほとんどです。

──加害者から誠意に欠ける返事が返ってきたとしても、心情等伝達制度を利用して良かったと語る遺族の例も紹介されています。そこでは加害者の人間性が理解できたので、「こういう人間だったのだ」と腑に落ちたとも取れる遺族の感想がありました。