21歳の女性を殺した少年が被害者の母親に送ったひどい言葉

──第三章で紹介された21歳の娘を殺害された母親の気持ちは無念でした。娘さんを殺害したのは当時15歳の少年でした。心情等伝達制度を通して亡くなった被害者の母親と加害者の少年が言葉を交わしましたが、少年からは被害者の母親を愚弄するような言葉しか出てきませんでした。加害者の態度は実にひどいものですが、一方では、加害者が強がりから悪人を演じることをやめることができずにいるのではないかとも想像しました。

藤井:加害者から話を聞く場合も、被害者や遺族から話を聞く場合も、刑務官は言った以上のことを書けません。だから、配慮を欠いた言葉が出てきたとしても(脅迫でない範囲であれば)基本的にはそのまま書かなければなりません。その時に、刑務官が「本当はこう思っているんじゃないの?」などと質問して物言いを変えさせてはならないのです。ここが刑務官の役割であり限界でもあります。

 加害者が無言で回答するケースもありました。そういう場合は基本的に何かしら答えが出てくるまで刑務官が待つのです。難しい場合は質問を文章で渡して、しばらく考える時間を与えることもあります。それでも言葉が出てこない人もいて、結果的に、回答用紙が無内容になって返ってくる。

 この15歳の加害者のケースは、満期15年の不定期刑(短い場合と長い場合の幅のある刑期)です。長くても15年経てば彼は社会復帰できます。僕はこのケースで15年は短すぎると思いますが、そうした状況を見越して、言いたい放題言ってやろうという考えを彼は持っているのかもしれません。

 被害者や遺族とのやり取りと並行して、精神の専門家なども入り、矯正プログラムが組まれることがあれば、今回の心情等伝達制度は本当の意味で効果的になると思います。

「酒鬼薔薇聖斗」で有名な少年Aの事件がありましたが、あの時は矯正のための特別チームが組まれ、出所後も精神科医などが入った特別チームが付き、指導をしたり監視したり、福祉や医療につなげるサポートなども提供しました。本当はそうした措置がもっと必要です。

──藤井さんは取材の過程で、法務省矯正局を訪問し、担当者に心情等伝達制度の効果、目的、運用の実態について質問されています。その中で「被害者を傷つけるような返答をした加害者には、特に留意をして矯正プログラムを組むように刑事施設に対して指示していきたい」という回答を得たと書かれています。