企業体質を変えずに統合すれば何が起きるか

 ホンダも言うべきことをなかなか言えないという気風が年々濃くなっており、組織の硬直化を招いている。一例は悪化する品質問題への対処だ。

 八郷隆弘前社長は毎年のように巨額の引当金が発生する品質費用を軽減させるため、生産、開発、営業と複数のセクターにまたがる品質改革の組織を作り、それを社長直轄とした。が、ふたを開けてみると関連部署への忖度が先に立ち、品質改革にはほとんど寄与しなかった。

 ある時、欠陥がどの段階で発生しているかを精査したことがあり、その結果およそ9割が開発由来であることが判明した。当然それを開発に伝えて善後策を練るべきところなのだが、その責任者は「そんな恐ろしいことは言えない」と尻込みし、抜本的改革はなされずじまいだったという。

 取材を進めていくと、両社とも特定の部署の問題ではなく一事が万事でそういう気質があると多くの関係者が証言した。なぜ正しい報告や意見具申ができないのか。それは現場に立つ社員が悪いからではない。良いことであれ悪いことであれ、正しい情報を伝えることこそ最も大切で有用という姿勢を経営者が示し、それを実現させるための組織づくりを行っていないことが大きな要因になっている。

 両社がこの官僚体質を変えない限り、戦いの最前線にいる末端の社員が保身に走って誤った情報を伝えたり、そうでなくとも都合の良い情報だけを選択的に伝えたりという状況を改善することはできない。それでは経営統合をしたところで敵を知らず己を知らず、敗れるための戦いを続けるようなものだ。

 一度は破談になったとはいえ、ホンダと日産の経営統合は日本の自動車業界における再編の目玉であることに変わりはない。2026年に何らかの動きが出るかどうかは注目の的だが、仮に統合が実現したとしても両社の悪い体質が温存されたまま大リストラを行い、延命を図るだけのものになってしまうようでは多くの不幸な人を新たに生むばかりであるし、日本の自動車産業にとっても何の得にもならない。

 ホンダの三部、日産のイヴァン・エスピノーサ両社長には、意思決定の透明性と経営トップとしての器量が真に問われるところである。

写真:ロイター/アフロ